
年に1回、自治体や勤め先の保健事業で受けられる「子宮がん検診」。子宮がんとはどんなものなのか、よくわからず受けている人が多いのではないでしょうか。実は子宮がんは2種類あり、そのうち一つは50代以降に患者が急増する特徴があるそうです。そこで、産婦人科医の駒形依子先生に40代~50代女性が知っておきたい子宮がんについて聞きました。
教えてくれたのは…
監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。
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子宮がんにはどんな種類がある?

できる場所によって「子宮頸がん」と「子宮体がん」に分かれます
子宮がんは、できる場所と原因によって2種類あると言います。
「子宮の奥には、妊娠すると胎児が宿る体部があります。この体部にできるのが子宮体がんです。主な原因は女性ホルモンのバランスの乱れで、閉経後の50代が発症年代のピークです。
一方、子宮の入り口付近の細くなった部分の頸部にできるのが子宮頸がんです。性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染で起こり、現在は20~30代が発症年代のピークになっています」(駒形先生)。
それでは、40代・50代女性が特に注意しないといけないのは子宮体がんということになりますか。
「子宮体がんは早期発見が重要なので、どんな症状があるかは知っておいてほしいですね。女性ホルモンの影響を強く受けるので
- 閉経している
- 月経不順
- 妊娠・出産の経験がない
- 肥満
- ホルモン補充療法を経験している
といった方は注意が必要です。
未産と肥満が高リスクの理由
妊娠・出産経験がないことがなぜ高リスクになるのでしょうか。
「子宮内膜は、エストロゲンにさらされればさらされるほど炎症を起こしやすくなります。
妊娠・出産・授乳中は生理がなく、生理があるときに比べて子宮内膜がエストロゲンにさらされる機会が減ります。一方、妊娠・出産経験のない女性はそれだけ子宮内膜がエストロゲンにさらされる機会が増えるので、リスクが高いと言われるのです」(駒形先生)。
肥満はどのように関係しているのでしょうか。
「エストロゲンはエストロン、エストラジオール、エストリオールの3種類で構成されていますが、このうちエストロンは脂肪細胞から分泌されることがわかっています。
つまり、脂肪細胞の面積が大きければ大きいほど、つまり太っていれば太っているほどエストロンが分泌されやすくなります。
閉経後、エストロゲンに敏感に反応しやすくなった子宮内膜にこのエストロンが反応して炎症を起こし、がんに変化する可能性が考えられます」(駒形先生)。
また、40代、50代でも子宮頸がんを発症する女性はもちろんいるので安心はできません。子宮頸がんは性交渉で感染してから、およそ10~20年かけて発症することが多いので、30代や40代に感染して、40代、50代で発症することは十分あり得ます」(駒形先生)。
「子宮がん検診」では「子宮体がん」は検査しない!?

多くの集団検診で検査するのは「子宮頸がん」のみ
子宮体がんは50代以降から急増するということですが、「年に1回の子宮がん検診では陰性だから大丈夫」と思っている人も多いでしょう。しかし、なんと子宮がん検診では、子宮体がんは検査していないことがほとんどなのだそうです。
「一般的に、子宮がん検診では頸部の検査しかしません。つまり、子宮体部の検査はしないのです。
理由としては
- 生理には子宮体がんの予防効果があり、閉経後はリスクが高まるが、その時期は個人差があるから
- 子宮体部の検査は頸部よりも痛みが強く気軽にできないから
- 子宮体がんは閉経後にかかる人が多く、初期症状である不正出血で異変に気付きやすいから
- 子宮頸がんの発症年齢は幅広いから
- 子宮頸がんは生理がある人も多くかかり、初期症状が不正出血でわかりにくいので検査する必要があるから
などが挙げられます。
一部の自治体では不正出血のある50代以降の女性に限って子宮体がん検診をオプションで受けられるところもあるようですが、多くは、子宮がん検診といえば頸部のみの検査です」(駒形先生)。