40~50代女性の9割が悩みがあると回答。眠れない夜のドキドキ・モヤモヤに、今日からできるセルフケア【医師解説】

年齢を重ねるにつれて変化する睡眠の質。特に更年期世代の女性はその傾向が顕著で、約9割が「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの悩みを抱えているといわれています。実は、その背景には自律神経の乱れが大きく関わっている可能性も……。この記事では、更年期世代に起こりがちな“不眠”の原因と対策について紹介します。眠れない夜の「ドキドキ・モヤモヤ」を仕方のないことと諦めている方は必見! 質の高い睡眠を得るために、今日からできる対策を実践していきましょう。
「睡眠の悩み」にはどんなものがある? 40~50代のリアルを調査!
まずは、更年期世代の「睡眠の悩み」に関する調査結果を紹介します。40~59歳の女性244名に睡眠に関するアンケートを実施したところ、以下のような回答が得られました。
(※アンケートはすべてベビーカレンダー調べ)
Q1.最近「眠りの悩み」がありますか?(複数回答可)

Q2.「以前と比べて、眠りの質が変わってきた」と感じますか?

なんと、約90%が何らかの悩みを抱えているという結果になりました。また「以前と比べて、眠りの質が変わってきたと感じますか?」という質問については、207名の方が「とても感じる」「多少感じる」と回答。眠りに悩みがある方のほとんどが、睡眠の質の変化も実感していることが明らかになりました。
Q3.あなたが「眠れない」と感じるとき、その原因として思い当たることはありますか?(複数選択可)

続いて「眠れない原因として思い当たること」についても調査。アンケート結果からは「スマホやパソコンの使用」「ストレスや不安」「生活習慣の乱れ」などが、眠れない原因として多く挙げられました。また、更年期による影響や睡眠環境の問題など、年齢に伴う体の変化や身の回りの環境も眠りにくさに影響していることがうかがえます。
さらに、就寝前は交感神経から副交感神経へと自律神経の働きが切り替わっていくのですが、その切り替えがうまくできない方は、動悸を感じてしまい不眠につながるケースも……。「睡眠前にドキドキすることがある」という方も要注意です。
質の高い睡眠を得るには、まずこうした原因を一つずつ見直すことが大切です。ただし、更年期特有の動悸や息切れが原因となっている場合は、生活習慣や睡眠環境を整えるだけでは改善が難しいこともあります。しかし実際には、「更年期だから仕方のないこと」と我慢している方が少なくないのが現状です。
眠れないのは体からのサイン! 更年期に多い「なんとなく不調」とは

更年期は、心身ともに大きな変化が訪れる時期とされています。動悸や息切れによる不眠、ほてり、発汗、疲労感などの不調が起こりやすく、気分も落ち込みがちに。このような更年期特有の症状は「なんとなく不調」と表現され、女性ホルモンの減少が主な原因といわれています。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンという2つの種類がありますが、更年期は特にエストロゲンの低下が顕著に表れます。エストロゲンは、自律神経のバランスを整える役割を担うホルモン。副交感神経の働きを促進し、リラックス効果を高めることでスムーズな入眠を促します。しかし、エストロゲンが欠乏すると自律神経系のコントロールがうまくできなくなり、夜間も交感神経が優位な状態に。その結果、動悸や息切れ、ホットフラッシュなどが起こり、睡眠が妨げられてしまいます。
もちろんこうした睡眠の変化は、女性特有の問題ではありません。加齢とともに、睡眠のリズムを調節するメラトニンや睡眠の質に関与する成長ホルモンの分泌が少なくなると、性別に関係なく深い眠りを得にくくなるとされています。しかし、ホルモンバランスが乱れる更年期の女性は特にその影響を強く受けやすく、子育ての終わりや親の介護といったライフステージの変化も重なり、睡眠の質が大きく変わりやすい状況にあるのです。
つまり、更年期世代にとって睡眠の質が変わるのは「よくあること」。ですが、決して「我慢すべきこと」ではありません。「なんとなく調子が悪い」「よく眠れない」と感じているならば、それは体からのサイン。更年期特有の不調と向き合うには、日々の生活の中で無理なくできるケアを取り入れていくことが大切です。
眠れない夜にみんながやっていることは?

では、眠れないときには、どのようなケアを取り入れるといいのでしょうか? アンケートでは、眠れないときの対応として以下のような意見が寄せられました。
Q4.眠れないとき、あなたが実際にやっていることはありますか?(複数回答可)

一番多かったのは「スマホを見てしまう」という回答でした。しかし、寝る前のスマホには要注意。スマホなどの画面から放出されるブルーライトは睡眠の質に影響を与えると考えられており、質の高い睡眠を得るには就寝の30分前までにスマホの使用を控えるのが理想です。また、カフェインのとりすぎや寝酒もNG。眠りを妨げ、中途覚醒を引き起こす原因となります。
また、意外にも多かったのは「特に何もしない」という回答。多くの方が布団の中で頑張って眠ろうとしている状況がうかがえますが、実は眠ろうと意識するほど、かえって頭はさえてしまいます。スムーズに眠りにつくには「温かいお風呂に入る」「音楽や環境音を聞く」「ストレッチやヨガをする」など、リラックスを促す行動が効果的です。
睡眠の質を改善するには睡眠環境や生活習慣を整えることが基本ですが、そうした工夫を続けても睡眠の質に変化がない場合には、市販薬やサプリメントに頼るのも選択肢の1つ。市販薬やサプリメントはドラッグストアなどで手軽に購入できるため、仕事や家事などで忙しい方でも取り入れやすいのがメリットです。
ゆらぐ心身に「やさしい選択」を

更年期は動悸や息切れ、不眠といった体の不調が起こりやすい時期です。また、子育てや親の介護などで、精神的な負担が掛かりやすい時期でもあります。「原因ははっきりしないけど調子が悪い」「いつもなんとなく不調」「よく眠れない」と感じていても、忙しい日々の中ではつい自分のことを後回しにしてしまうことがあるかもしれません。
しかし、心身がゆらぎやすい更年期に無理は禁物! 自分をいたわる視点を大切にし、不調をきちんとケアすることが、人生を健やかに過ごすための重要なポイントとなります。
例えば、起床時間や就寝時間などを睡眠日誌に記録したり、アプリなどの睡眠管理ツールを取り入れたりするのもおすすめ。睡眠習慣や生活リズムを把握することは、自分を大切にする第一歩です。眠れない夜の「ドキドキ・モヤモヤ」をそのままにせず、自分の心や体と向き合い、ラクに過ごせる方法を模索していきましょう。
頑張り続ける40代・50代こそ「眠れる心と体」を育てていこう
更年期世代は、仕事や家族のことなど日々たくさんの役割を抱えていますが「なんだか最近つらいな」と感じたときは、無理せず立ち止まることも必要です。睡眠は、心と体の健康を支える土台。ぐっすりと眠るためのセルフケアが、明日への元気につながります。
また、自分が疲れたままでは誰かを思いやる余裕を持つことも難しくなってしまうものです。自分をいたわることは、家族や周りの人を大切にすることでもあります。“眠れる心と体”を育てることで、無理なく更年期を乗り越えていきましょう。

五藤 良将先生
医療法人社団五良会理事長、竹内内科小児科医院院長、日本睡眠学会所属
防衛医科大学校卒業、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院などで自衛隊医官として勤務。その後、津田沼中央総合病院など経て2019年9月に竹内内科小児科医院を継承し院長となる。生活習慣病をはじめとし、診療は多岐にわたる。訪問診療や往診、夜間・休日診療、オンライン診療と、あらゆる方法で最初に患者を診る。「診断や治療についてわかりやすく説明する」「無駄な治療や投薬をしない」「病気と付き合いながら人生を楽しく」「医療の進歩にあわせた新しい治療を提供する」がモットー。