
アラフィフになり、めっきりカタカナ言葉がわからなくなってきましたが、最近、心に引っかかった言葉に「レジリエンス」があります。知れば知るほど、これは更年期を生き抜くために大切な力ではないかと実感しています。どんな意味なのか、レジリエンスを高めるために私がしていることをお伝えします。
レジリエンスは自分の逆境を受け入れながら生き延びる力
レジリエンスとは元々物理学で使われていた用語。調べてみたところ、物体に力が加わると変形しますが、どのくらい変形したまま耐えることができるのか、もしくはその力を除くと元の形に戻れるかを示すだそうです。例えばボールをギュッと握ったとき形が変わりますが、離すと元に戻ります。この変形と元に戻る力がレジリエンスです。そのため、弾力性、回復力などと呼ばれることがありますが、両方兼ねそろえている力であるため、日本でも「レジリエンス」で表現されているようです。
レジリエンスは分野によっていろいろな使われ方をしていて、明確な定義はないようなのですが、私は“困難な状況にあっても柔軟に適応し、生き延びる力”というような意味があるように思いました。最初はいい言葉だな程度にしか思っていなかったのですが、令和2年1月に実施された最後の大学入試センター試験の国語にレジリエンスが出題され、新聞で何気なく読んだのですがガッツリ心に刺さったのでした。出典元は河野哲也氏の『境界の現象学: 始原の海から流体の存在論へ』 (筑摩選書) で、「レジリエンスとは、自己ニーズを充足し、生活の基本的条件を維持するために、個人が持たなければならない最低限の回復力である」「脆弱性は、レジリエンスを保つための積極的な価値となる」と書いてあり、ダメなこと、弱いことを受け入れていいんだ、これが生きる力になるんだと思ったのです。
体の不調や心の不安をそのまま受け入れていいという土台に
更年期に突入し、真冬でも満員電車に乗ると噴き出す汗、腰椎椎間板ヘルニアで痛みを抱えたままの足腰、老眼もかなり進んで……。6と8の区別がつかないばかりか、「ベンチ」とスマホで打ったつもりが「ペンチ」になっていても気付かない。ハンドクリームを買ったつもりが、同じデザインのパッケージの洗顔剤! それを電車で必死こいて塗っていたら泡立ってきてびっくり! 一見すると笑い話になりますが、実際それをしでかしている本人は何をやっているんだと悔しく思うこともあります。
次々と襲ってくるマイナス的な出来事やネガティブな感情。生来“なんとかなる”“トライアンドエラー”と楽観的で前向き思考の私でも、体もメンタルもズタボロになることがあります。そんなときに出合った「脆弱性は、レジリエンスを保つための積極的な価値となる」、すなわち「脆弱性とは、変化や刺激に対する敏感さを意味しており、(中略)環境の不規則な変化や撹乱、悪化にいち早く気づけるからである」という言葉にスッと気持ちがラクに。弱った心と体は変化を捉えるセンサーなんだと受け止められるようになりました。
レジリエンスで手抜き家事により一層邁進

バブルを経験した私。頑張ればなんとかなる、しっかりやり遂げれば成果が出るということを体験してきました。なので、仕事も家事もプライベートも何も手放せない、手放したくないという思いが。とはいえ、心と体の劣化は否めない。いろいろしようとしてもできないという理想と現実のギャップをひしひしと感じています。そんなときに巡り合ったレジリエンスという考え方。更年期にピッタリだなぁと。弱さを受け入れることが強みになる。“災い転じで福となす”ですね。ダメなものはダメなままでいい、できないことを受け入れていい。そう考えることで、不定愁訴てんこ盛りの更年期をやり切れるかもと思いました。
そこで、考え方だけでなく、家人がうるさく言わないことも幸いして、家事の手抜きをさらに実践。掃除機をかける本格的な掃除は月1度。苦手なアイロンがけもカーディガンや背広、ブレザーを着る場合は、人から見える袖と首、胸元だけに。1週間分まとめてしていた買い物は、足りないもの・必要なものをその日その日で買うスタイルへ。買い物の頻度とおそらく食費は増えたけど、1回で買う量は確実に減り、義務感にかられてしていた買い物が気分転換のためのものになりました。今までの生活で決めていたマイルールのなかで手放せるものは手放しながら、心と体に負担なく、暮らしていく術をこれからも実践していきたいと思います。
まとめ
新聞で何気なく読んだ大学入試センター試験の問題でレジリエンスの考え方に触れて、更年期との付き合いが少しラクになりました。変化を受け入れながら柔軟に生きていく。まだまだそこまで達観できていないときもありますが、それもまたネタにして書けばいい。自分を甘やかしながら、ゆるゆると過ごしていきたいと思います。
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