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更年期に現れるさまざまな症状がひどくなり、日常生活に支障を来すほどの重い症状になってしまう更年期障害。症状には、ほてりや発汗、めまい、睡眠障害などの身体的反応と、自己価値感の低下や抑うつ感、イライラなどが含まれる心理的な反応があります。突然ほてりや発汗がやってくるホットフラッシュや、イライラ、睡眠障害などで、仕事にもプライベートにも支障を来し、苦しんでいる方は多いのではないでしょうか。そこで、更年期障害の症状、原因と対処法について産婦人科医の天神尚子先生にお聞きしました。実際に更年期症状を経験した方の体験談も紹介していますので、ひどい症状についてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
監修/天神尚子先生(三鷹レディースクリニック院長)
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
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ここでは、更年期によく現れる症状の具体例とその影響について10項目挙げるとともに、栄養補給、運動習慣、リラクゼーションテクニックなど、一般的な対処法を紹介します。
更年期障害における血管運動神経症状のほてり、のぼせ、発汗について詳しく解説します。突然の体温上昇や顔・首のほてり、強い発汗を伴う症状は「ホットフラッシュ」と呼ばれ、更年期女性の約6割が経験するといわれています。
これらの症状は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少により、血管の収縮や拡張を制御する自律神経のバランスが乱れることで起こります。
ホットフラッシュは、突然2~4分間持続する熱感と発汗を特徴とし、脈拍の増加も伴います。症状は顔や頭部、首から胸にかけて広がることが多いです。顔の紅潮、涼しい環境下での発汗などもホットフラッシュの一症状と考えられます。
これらの症状が仕事中や外出先で起こると、服装やメイクの乱れ、不快感、さらには再発への不安から、日常生活に大きな支障を来す場合もあります。特に、夜間のホットフラッシュは睡眠の質を低下させ、日中の疲労感やパフォーマンスの低下につながる可能性があります。
・生活習慣の改善
ホットフラッシュへの対処法としては、生活習慣の改善が基本となります。適度な運動とバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけましょう。また、カフェインやアルコール、辛い食べ物の摂取を控え、部屋の温度を適切に定めることも大切です。服装は脱ぎ着しやすく、体温調節がしやすいものを選ぶと良いでしょう。
・発汗対策
発汗対策としては、吸湿性や通気性に優れた素材の衣服を着用し、蒸し暑い場所や暖房が効き過ぎた部屋を避けることが有効です。また、汗拭きシートや保冷剤を携帯するのもおすすめの方法です。
・リラクゼーション
ストレスや緊張は症状を悪化させるため、リラクゼーション法を取り入れることも重要です。深呼吸や瞑想、ヨガ、マインドフルネスなどを実践し、心身の緊張をほぐしましょう。
更年期障害における精神神経症状は、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。イライラ感、憂うつな気分、不眠、強い不安感、意欲の低下、物忘れなどが代表する症状として挙げられます。
これらの症状の主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少に伴う脳内物質の変化にあると考えられています。特に、幸福感や満足感に関与する脳内物質のセロトニンの減少が、気分の変調や不安感の増大に関連しているといわれています。
また、更年期は人生の転換期であり、家庭や仕事環境の変化、親の介護、子どもの自立など、さまざまなライフイベントが訪れる時期でもあります。不安、老いの覚悟などが精神的な不安定さを助長する可能性があります。
精神神経症状は、他の更年期症状とも密接に関連しています。例えば、不安感により夜間に目を覚ましてしまうことは不眠につながり、慢性的な疲労や日中のパフォーマンス低下を招きます。さらにこれらが物忘れの症状を悪化させることも。これらの症状が長引くと、家庭や職場での人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
・適度な運動
精神神経症状への対処法としては、まず適度な運動が推奨されます。有酸素運動やウォーキングなどの身体活動は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、心身のリフレッシュに役立ちます。さらに定期的な運動は睡眠の質を改善し、情緒の安定化を促します。
・リラクゼーション
深呼吸、瞑想、ヨガなどに加え、筋肉の緊張をほぐし内面に意識を向けるリラクゼーション法も有効とされています。これらを取り入れることで、ストレス耐性の向上と心の平静を保つことができます。
・カウンセリング
専門家によるカウンセリングも選択肢の1つです。 カウンセラーや心理学者と対話することで、感情やストレスの管理方法を学び、心の支えを得ることができます。必要に応じて薬物療法や認知行動療法などの治療をおこなう場合もあります。
更年期障害における頭部の症状として、頭痛や頭重感が挙げられます。特に、こめかみから目にかけて脈打つような痛みを伴う片頭痛は、更年期女性に多く見られる症状の1つです。女性ホルモンであるエストロゲンの変動に伴う自律神経の乱れが関与していると考えられています。
片頭痛の症状は多岐にわたります。きらきらした光や点、線が見えるような視覚異常や、光や音などの特定の刺激に対する過敏反応が認められることがあります。また、日常的な動作により痛みが増悪し、時々悪心や嘔吐を伴う場合もあります。これらの症状は、仕事の生産性や日常活動に大きな制限を引き起こす可能性があります。
また、首や肩の血流不全が原因で発生する緊張型頭痛も更年期の症状として挙げられます。緊張型頭痛は、頭部全体が圧迫されるような痛みを特徴です。日常動作で悪化することはなく、発作中の悪心・嘔吐などの消化器症状は伴わないことが多いです。
・ストレス管理
頭痛や頭重感への対処法としては、まずストレス管理が重要です。日常生活におけるストレスを特定し、時間管理や優先順位の設定をおこなうことで、ストレスの軽減を図ります。リラクゼーション法や深呼吸、瞑想などのストレス解消法を積極的に取り入れることも有効です。
・適切な休息
規則正しい睡眠リズムを確立し、快適な睡眠環境を整えることで、頭痛や頭重感の緩和につながります。リフレッシュすることも症状の改善に役立ちます。
・適度な運動
有酸素運動やウォーキングなどの身体活動は、血液循環を促進し、頭部の血流を改善する効果が期待できます。ストレスホルモンのコルチゾールの分泌を抑制し、心身のリフレッシュを図ることができます。ちなみに、激しい運動は頭痛を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
・水分補給
定期的な水分摂取により、体内の水分バランスを維持し、血液の循環を促進することで、頭部の血流改善が期待できます。暑い季節や運動後は、こまめな水分補給を心がけましょう。
更年期障害における末梢神経系の症状として、手足のしびれやこわばりが起こることがあります。
これらの症状の背景には、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が関与していると考えられています。関節や腱の周りにある滑膜(かつまく)は、腱などの動きを滑らかに保つ機能があり、エストロゲンの低下により、この機能が低下することで症状が現れるようになります。
また、加齢に伴う変化に加えて、日常的な手指の酷使も症状の発現に関与する可能性があります。
手足のしびれやこわばりは、起床時に指の関節が曲がりにくくなる、瓶のフタを開ける、物をつまむような細かい作業で痛みが出やすく、生活の質の低下につながる可能性があります。
・定期的なストレッチ
症状への対処法としては、まずは定期的なストレッチが有効です。問題のある部位を中心に、筋肉の柔軟性を維持するためのストレッチをおこなうことで、しびれやこわばりの軽減が期待できます。
・適切な姿勢
正しい姿勢を意識することで、神経や血管への圧迫を極力抑え、症状の予防につながります。デスクワークや立ち仕事では、椅子や机の高さ正しく調整し、姿勢に注意しましょう。
・温熱療法
問題のある部位を温めることで血流が促進され、こわばりやしびれの緩和が期待できます。 温めたタオルや湯たんぽの使用、温かいお風呂への入浴などの方法がおすすめです。
・マッサージ
マッサージは筋肉の緊張を緩和し、血液循環を促します。手足のしびれやこわばりを和らげるためには、適度な圧力を加えておこないましょう。
・栄養バランスの良い食事
ビタミンB群やマグネシウム、カルシウムなどの栄養素をバランスよくとることで、神経の機能をサポートし、手足のしびれやこわばりを軽減します。果物や野菜、魚などを取り入れた健康的な食事を心がけましょう。
更年期障害における運動器系の症状として、肩凝り、腰痛、関節痛が挙げられます。これらの症状は、更年期に特徴的な変化の1つといわれています。
症状の主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少に伴う自律神経の乱れにあると考えられています。エストロゲンの低下により血液循環が悪化すると、筋肉への酸素や栄養素の供給が不足し、老廃物や疲労物質の排出も滞ります。その結果、肩凝りや腰痛、関節痛などの症状が現れやすくなります。また、加齢に伴う筋力の低下も症状の発現に関与しています。肩凝りや腰痛などの症状が悪化して頭痛につながる可能性があります。
これらの運動器系の症状は、日常生活における活動性や運動能力を制限し、仕事のパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。
・ストレッチと運動
柔軟性を高めるストレッチや、筋力強化のための運動を定期的におこなうことで、筋肉や関節の柔軟性を維持し、痛みを軽減します。適度な運動は血流を促進し、栄養素の供給や老廃物の排出を助けるため、関節や筋肉の健康維持に役立ちます。
・温熱療法
痛みのある部位を温めることで、血流が増加し、筋肉や関節の緊張が緩和されます。温かい湿布の貼付や、温めたタオルの使用などの温熱療法をおこなうことで、肩凝りや腰痛、関節痛の症状を和らげます。
・正しい姿勢の保持
正しい姿勢の保持や、人間工学に基づいた環境の整備も重要です。 デスクワークや長時間の立ち仕事では、椅子や机の高さを正しく調整し、正しい姿勢を意識することで、運動器系の負担を軽減することができます。
・栄養バランスの取れた食事
バランスの取れた食事や十分な睡眠も症状の管理に役立ちます。 カルシウムやビタミンDなどの栄養素は、骨や関節の健康を維持し、痛みの軽減につながります。
更年期障害における生殖・泌尿器系の症状として、頻尿、尿漏れ、性交痛があります。これらの症状は、女性ホルモンの変動に伴う体の変化が主な原因と考えられています。
頻尿や尿漏れの背景には、女性ホルモンの変動による骨盤底筋の緩みが関与しています。また、出産や体重増加、慢性便秘なども骨盤底に負担がかかり、症状を悪化させる可能性が高くなります。
一方、性交痛は、腟内部の粘膜の変化が原因の1つと考えられています。更年期に伴うエストロゲンの低下により、腟粘膜が薄くなり、乾燥しやすくなります。その結果、性交時のかゆみやひりひり感、痛みなどの不快症状が現れやすくなります。
これらの症状は、社会生活や性生活に大きな影響を与え、自尊心低下やパートナーとの関係悪化につながる可能性があります。
・骨盤底筋トレーニング
腹筋に力を入れず、呼吸しながらリラックスし、肛門と腟をキュッと締める骨盤底筋体操は、骨盤底筋の強化に効果的です。尿道や膀胱を支える筋肉を鍛えることで、尿漏れの改善が期待できます。また、膀胱粘膜の血流を促進し、頻尿の症状の軽減につながります。
・潤滑剤の使用
性交痛への対処法としては、水溶性の潤滑剤の使用が有効です。潤滑剤を使うことで、性器の摩擦を軽減し、性行為中の痛みや不快感を軽減することができます。性生活を維持することで、パートナーとの関係性の向上にもつながります。
・生活習慣の見直し
過度の飲酒や喫煙、カフェインの摂取は、頻尿や尿漏れを悪化させる可能性があるため、控えめにすることが推奨されます。定期的な排尿習慣を身に付け、膀胱を正しく空にすることも重要です。
更年期障害における皮膚の症状として、乾燥肌やかゆみがあります。これらの症状は、女性ホルモンの変動に伴う皮膚の変化が主な原因と考えられています。
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、皮膚の健康維持に重要な役割を果たしています。更年期に伴うエストロゲンの量の減少により、皮膚の弾力性やハリなどの若々しさが失われ、乾燥やかゆみ、シワの増加などの症状が出やすくなります。
また、加齢に伴う皮膚のターンオーバーの乱れも症状の発現に関与しています。
これらの皮膚症状は、日常生活の快適さを損なうことなく、自己イメージにも影響を与えます。肌の変化により、社会的な自信の低下を引き起こすこともあります。
・保湿
まずは積極的な保湿が推奨されます。乾燥肌やかゆみを改善するには、保湿剤やクリームを使って肌を保護し、水分を閉じ込めることが効果的です。入浴後5分以内に保湿剤を塗布すると、肌の水分量を維持しやすくなります。また、加湿器を使って室内の湿度を適切に保つことも、肌の乾燥予防に役立ちます。
・肌にやさしいスキンケア製品の使用
低刺激の洗顔料や化粧水を使用し、肌をやさしく洗浄することで、肌への負担を最大限に抑えられます。香料やアルコール、防腐剤などの刺激物を含まない製品を選ぶことで、肌トラブルのリスクを軽減できます。
・紫外線対策
紫外線は肌の老化を促進させ、乾燥やシワの原因になります。日焼け止めを塗る、日傘を使うなどの紫外線対策もしっかりおこないましょう。
更年期障害における消化器系の症状として、喉の違和感、おなかの張り感、便秘などが挙げられます。これらの症状は、女性ホルモンの変動に伴う消化器系の機能低下が主な原因と考えられています。
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、消化管の運動や蠕動(ぜんどう)の調節に関与し、消化器官の粘膜を健康に保つ重要な役割を担っています。消化器系の機能が低下すると、さまざまな消化器症状が現れやすくなります。
喉の違和感や喉の詰まり感は、消化管の運動の低下により、食道の機能が影響を受けることで生じる可能性があります。また、おなかの張り感は、消化管の運動の低下により、ガスや便の滞留が起こっていることによるものと考えられます。便秘も、消化管の運動性の低下が主な原因の1つです。
これらの消化器症状は、食事や社会活動時の不快感を引き起こし、日常生活の質を大きく低下させる可能性があります。
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・食生活の見直し
食物繊維や水分を多く含む野菜や果物を積極的に摂取することで、消化を促進し、便通を改善することができます。また、過剰な脂肪や糖分、刺激物を避けることで、消化器官への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐことができます。
・規則正しい食事
規則正しい食事習慣の確立が重要です。一定の時間に食事をすることで、胃腸の働きを整え、消化吸収をスムーズにすることができます。また、ゆっくりと十分にそしゃくすることや、食事量を適度に心がけることも、消化器官への負担を軽減し、症状の改善につながります。
・適度な運動
運動も消化器系の機能を促進するのに役立ちます。適度な運動を定期的におこなうことで、消化管の蠕動(ぜんどう)運動を見据えて、便秘の改善や腹部の張り感の緩和が期待できます。ウォーキングやヨガなどの軽い運動から始めるのがおすすめです。
・ストレス軽減
ストレス管理も症状の軽減に重要な役割を果たします。ストレスは消化器系の機能が悪影響を考慮する可能性があるため、リラクゼーション法や瞑想、深呼吸などを取り入れ、ストレスをじょうずに管理することが大切です。
・水分の摂取
便秘改善には、十分な水分補給も欠かせません。水分不足は便秘を悪化させる原因になります。1日に1.5~2リットルを目安に水分を摂取するように心がけましょう。
更年期障害における循環器系の症状として、動悸や息切れがあります。これらの症状は、女性ホルモンの変動に伴う自律神経のバランスの乱れが主な原因と考えられています。
更年期に伴う卵巣機能の低下により、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になります。しかし、視床下部はエストロゲンの減少を感じて、性腺刺激ホルモンの分泌が持続的に促進されます。結果、視床下部が過剰に反応し、自律神経のバランスが崩れることで、動悸や息切れなどの症状が現れやすくなります。
これらの症状は、安静時にも突然起こることがあり、運動をしていないにもかかわらず、息切れや息苦しさを感じる場合があります。これらの症状により身体活動や運動時の不安・ストレスを増加させ、活動量の減少につながる可能性があります。
・カフェインの摂取制限
カフェインには興奮作用があり、心拍数や呼吸を促進する効果があるため、過剰な摂取は動悸や息切れを引き起こしやすくなります。コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物の摂取量を抑え、代わりにハーブティーやデカフェ飲料、水を選ぶことで、症状の軽減が期待できます。
・リラクゼーション
ストレスは自律神経のバランスを乱し、動悸や息切れの原因になります。深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラックス法を取り入れることで、心身の緊張をほぐし、自律神経のバランスを整えることができます。また、これらの技法は心理的なリフレッシュにも役立ち、ストレス耐性の向上にもつながります。
・適度な運動
適度な運動は、循環器系の機能を強化し、心肺機能の向上につながります。 ウォーキングやスイミング、ヨガなどの低強度の運動から始め、徐々に運動量を増やしていくことで、動悸や息切れの軽減が期待できます。
更年期障害における全身症状やその他の症状として、だるさ、疲れやすさ、冷え、めまい、ふらつき、ドライアイ、目の疲れ、においに敏感になる、指の太さの変化、太りやすさなどがあります。これらの症状は、女性ホルモンの変動や自律神経のバランスの乱れが主な原因と考えられています。
・疲れやすさ
疲れやすさは、更年期に特徴的な症状の1つです。自律神経の乱れにより、一時的な休息では回復が難しい慢性的な疲労感を感じることがあります。やる気のなくなってしまった自分を責めて、それがストレスになり、疲労感がなかなか軽減できないという悪循環になることもあります。
・冷え
冷えは、自律神経の乱れによる血流の悪化が原因とされています。特に、手足などの末端への血流が低下すると、冷感やしびれ、筋肉のこわばりなどの症状が現れやすくなります。
・めまい
めまいは症状によって、回転性めまい、動揺性(不動性)めまい、失神型めまいの3種類に分類されます。 更年期におけるめまいは、女性ホルモンや血圧の変動、自律神経の乱れが関与していると考えられていますあります。
・ドライアイや目の疲れ
ドライアイや目の疲れは、涙の分泌減少やホルモン変動による視力の変化が原因とされています。エストロゲンの低下により、目の粘膜細胞が萎縮し、潤いが不足することで、目の不快感や疲労感が生じます。
・におい
においに敏感になる症状も報告されています。エストロゲンの分泌低下により、抗酸化作用が低下し、皮脂の酸化が進みやすくなります。また、腟内の自浄作用の低下や口腔内の変化により、体や口臭が気になることもあります。
・指の太さの変化
指の太さの変化は、エストロゲンの減少による腱の腫れや関節の可動性低下が原因と考えられています。指のむくみや太さの増加は、日常生活の不便さにつながる場合があります。
・太りやすさ
太りやすさは、加齢に伴う筋肉量の減少や代謝の低下、エストロゲンの分泌減少による身体の調節機能の低下が関与しています。
これらの症状は、活動的なライフスタイルの維持が難しく、運動不足を助長する可能性があります。
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・十分な休息
十分な休息、バランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理を心がけましょう。疲れやだるさなどの症状には、十分な休息が重要です。 質の良い睡眠を確保し、ストレスをためないように心がけることで、全身症状の改善につながります。
・栄養バランスの良い食事
栄養バランスの取れた食事は、全体的な健康の基盤となります。さまざまな栄養素を偏りなく摂取するために、野菜や果物、良質なたんぱく質、健康的な脂肪をしっかりと確保することが重要です。ビタミンやミネラルの不足を防ぐことで、更年期症状の軽減が期待できます。
・適度な運動
適度な運動は、血液循環の促進と代謝の活性化に役立ちます。 ウォーキングやストレッチなどの低強度の運動を日常的に取り入れることで、疲労感や冷えなどの症状を軽減することができます。
・ストレス管理
ストレス管理は、更年期症状の改善に欠かせない要素です。ストレスは身体的な不調の原因となるため、じょうずにコントロールすることが大切です。リラクゼーション法や瞑想や、深呼吸などのストレス解消法をおこなったり、趣味に没頭したりすることで、ストレスを発散することもできます。
更年期障害では、個人差が大きく、現れる症状や強さはさまざまです。血管運動神経症状のほてりや発汗、精神神経症状のイライラや不眠などが代表的な症状ですが、複数の症状が重なって現れることが多いのが特徴です。
ただし、これらの対処法はあくまでも一般的なガイドラインであり、症状の重症度や個人の状況に応じて適切に対応することが重要です。症状が重い場合や改善が見られない場合は専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。
では実際に、更年期障害の経験者からの体験談を紹介します。
Oさんは46歳で更年期障害を経験しました。 生理不順が続くようになり、突然の体の熱を感じるようになったのです。 ホットフラッシュは1時間ごとに起こり、夜中でも2時間ごとに目が覚めるほどでした。 さらに、不快や息苦しさもあり体調が悪くなり、婦人科を受講したところ、更年期障害と診断されました。
Oさんの症状は、女性ホルモンであるエストロゲンの低下による自律神経の乱れが原因だと説明を受けました。そこで、ホルモン補充療法(HRT)を開始することになりました。始めてからは、生理周期が順調に調整され、つらい症状も半分ほどに減少しました。 幸いなことに、Oさんにはホルモン剤の副作用である不正出血や乳房の張りなどは現れませんでした。約5年間ホルモン剤を継続し、症状が和らいできたタイミングで服用を終了しました。
ホルモン剤の服用を中止してから3年が経過した現在、Oさんは多少の不調を感じながらも、無理のない範囲で楽しく過ごすように。十分な睡眠と適度な運動を生活の基本としておこなってるそうです。
Kさんは更年期障害によるさまざまな症状に悩まされていました。 部屋の温度が高く感じられ、服を脱ぐと周囲との温度差を実感。家事に集中できず、子どもが話していることがわからず、イライラしてしまうこともありました。
更年期外来を受診したKさんは、更年期障害と診断されました。 職場からは外回りの業務が危険だと判断され、予期せぬ療養休暇に入ることになりました。医師からは漢方を処方され、リラックス、軽い運動、十分な睡眠、規則正しい生活を心がけるようアドバイスを受けました。
症状は改善傾向になりましたが、職場に復帰したことで不安が生じ、めまいやイライラが再発するなど、一進一退を繰り返す状況が続きました。しかし、4カ月後、無事に職場に復帰することができました。
振り返ってみると、社会から残される不安が、症状を悪化させていたのかもしれません。 現在は、適度な働き方を心がけ、疲れを感じたら休息を取り、体調不良のときは「仕方がない」と割り切るようにしていることです。
Sさんは43歳の夏ごろから、睡眠を取っても疲労感が払い払えない状態に陥りました。自宅から最大までの約15分の徒歩さえ、非常につらく感じられるほどの疲れに襲われました。特につらかったのは、帰宅時にスーパーに立ち寄ることすらおっくうになったこと。 食生活が乱れがちになり、「このままでは仕事の継続が難しいのでは」という不安が募る日々続きました。
同僚との会話がきっかけとなり、Sさんは婦人科を受診しました。 更年期障害と診断されました。 医師からのアドバイスは明確でした。 「まずは薬の力を借りて、自分の本来の元気な状態を。そして同時に、生活習慣を整えることで、その元気な状態を維持できるようにすること」でした。 Sさんには漢方薬が処方され、食物繊維を意識的に摂取するように指導を受けました。
処方された漢方薬は「加味帰脾湯(かみきひとう)」。 食生活に関しては、フルーツを積極的に食べるように言われました。 Sさんは、フルーツは甘すぎてダイエットに良くないと思って、これまで避けてましたね。 でも、ケーキとクッキーと比較すると、フルーツはカロリーが低く、食物繊維やビタミンが豊富に含まれていました。
医師から丁寧な説明をしてもらい、Sさんの物事の捉え方が変わり、前向きに生活習慣を整えられるようになりました。
更年期障害の主な原因は、女性ホルモン、特にエストロゲンの急激な減少にあります。女性が年齢を重ねると、卵巣の機能が低下し、エストロゲンとプロゲステロンの生産が減少します。このホルモンの変動が更年期障害のさまざまな身体的および心理的症状を引き起こす主な理由です。以下に、更年期症状の原因について詳細に説明します。
①生殖器系の変化
生殖器系では、エストロゲンが腟壁の厚さや潤いを維持する働きを持っているため、その減少によって腟乾燥や性交時の痛みなどの症状が現れやすくなります。
②骨密度の低下
骨代謝においても、エストロゲンは重要な役割を果たしています。エストロゲンは骨密度の維持に関与しており、その減少は骨粗しょう症のリスクを高めます。骨量の低下により、骨折のリスクが上昇し、日常生活の活動制限が生じる可能性があります。
③心血管系への影響
エストロゲンには、血管の健康を保護する重要な役割があります。エストロゲンの減少により、この保護効果が低下し、心臓病のリスクが増大する可能性があります。
④皮膚と髪の変化
皮膚と髪の変化も、エストロゲン減少と関連しています。 エストロゲンは、皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進し、皮膚の柔軟性や水分を保持する働きがあります。また、髪の成長サイクルに影響を与え、髪の薄毛や抜け毛、乾燥などの症状が現れやすくなります。
更年期における自律神経系の乱れは、エストロゲンの分泌減少が大きく関与していると考えられています。自律神経系は、体温調節、睡眠、心拍数などの重要な機能を調整する役割を担っていますが、エストロゲンの低下によってそのバランスが崩れ、さまざまな更年期症状を現れます。
自律神経系は、交感神経と副交感神経の2つに分けられます。 交感神経は身体の活動性を高める働きを持ち、血管を収縮させて血圧を上昇させる作用があります。副交感神経はリラックスや眠気を促進し、血管を拡張させて血圧を下げる働きを持っています。
これら2つの神経系のバランスが保たれることで、身体の恒常性が維持されます。しかし、更年期におけるエストロゲンの減少は、この自律神経系のバランスを乱すことになります。自律神経の調整機能が低下すると、交感神経が優位な状態が継続し、血管の緊張が持続します。その結果、副交神経感が過剰に反応し、血管が大幅に拡張することでホットフラッシュが生じると考えられています。
自律神経系の乱れへの対処法としては、リラクゼーション法やストレス管理、適度な運動も自律神経系のバランスを整えるため効果的です。
さらに、バランスの取れた生活習慣も自律神経の乱れを緩和するために重要です。 規則正しい睡眠と食事のリズム、アルコールやカフェインの過剰摂取の制限、喫煙の回避などの生活習慣の改善は、自律神経系の安定化に役立ちます。
更年期障害の原因には、ホルモンの変化だけでなく、心理的・社会的関与も大きく関わっています。エストロゲンの減少は、脳内の神経伝達物質のバランスに影響を与え、情緒不安定やイライラ、うつ症状などの心理的な変化を考える可能性があります。
また、更年期は、女性の人生において重要な転換期でもあります。子育ての終わりや子どもの独立、職場での役割の変化など、ライフステージの移行に伴うストレスや不安が受け止められることで、空の巣症候群と呼ばれる子どもの自立に伴う喪失感や、自分の存在価値への疑問など、更年期特有の心理的な課題に取り組む女性も少なくありません。
自分の心理的・社会的課題に対処するためには、周囲の理解とサポートが必要です。家族や同僚などの支援ネットワークを構築し、自分の感情や悩みを客観的にできる環境を作ることが重要ですまた、専門家によるカウンセリングを受けることで、心理的な問題に正しくする対処方法を学ぶことができます。 更年期の女性同士が集まるサポートグループへの参加も、共感と刺激を得られる貴重な機会となります。
自己ケアの実践も、心理的な安定を促進する上で欠かせません。自分の感情と向き合い、ストレス解消法を見つけることが大切です。ヨガや深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れたり、趣味やまた、規則正しい生活リズムを維持し、十分な睡眠と栄養バランスが取れた食事をすることも、心身の健康維持に役に立ちます。
更年期障害の症状は、ホルモンバランスの変化だけでなく、日常の生活習慣によっても大きな影響を受けます。 特に、睡眠リズムの乱れは、更年期症状を悪化させる主要な原因1つです。睡眠時間や睡眠不足は、ほてりやイライラ、疲労感などの症状を増強する傾向があります。十分な睡眠を確保し、規則正しい睡眠リズムを維持することが、症状の緩和に役立ちます。
ストレスの管理も更年期症状の改善に重要です。過度なストレスは、自律神経のバランスを乱し、ホルモン分泌にも影響を与えます。その結果、更年期症状がさらに悪化する可能性があります。ストレス対処法を身に付ける、リラクゼーション法や趣味の時間を確保するなど、積極的にストレス解消に取り組みましょう。
また、過食や偏った食事は、体重増加や栄養バランスの乱れを引き起こし、更年期症状を悪化させる結果になります。また、アルコールやカフェインの過剰摂取は、ホットフラッシュや不眠、イライラなどの症状を増強する可能性があります。バランスの取れた食事、適度な量のアルコールやカフェイン摂取にとどめることが大切です。
更年期における栄養管理は、健康的な生活を送るには重要な要素です。バランスの取れた食生活を心がけましょう。
・野菜、全粒穀物、魚や豆類、赤身肉の摂取
新鮮な果物や野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維の優れた供給源となります。玄米や雑穀などの全粒穀物は、エネルギーを持続的に供給し、消化器系の健康を促進します。また、魚介類や豆類、赤身の肉などの良質のたんぱく質源は、筋肉量の維持と体の修復をおこないます。
・イソフラボンを含む大豆食品の摂取
更年期症状の緩和において注目されている栄養素の1つが、大豆に含まれるイソフラボンです。イソフラボンは、植物性エストロゲンとして知られ、エストロゲン様の作用を持っています。イソフラボンを豊富に含む大豆食品の摂取が、ホットフラッシュの頻度や強度を減少させる可能性があります。
・こまめな水分摂取
水分補給も更年期の体調管理に欠かせません。十分な水分摂取は、体内の水分バランスを維持し、体温調節や老廃物の排出を助けます。また、脱水は疲労感やイライラ、頭痛などの症状を悪化させる可能性があるため、こまめな水分補給を心がけることが大切です。
更年期の女性は、これらの栄養面での工夫を日常生活に取り入れることで、ホルモンバランスの変化がもたらす影響を極力抑え、症状の緩和と健康維持につなげることができます。
更年期における適度な運動は、身体的・精神的な健康を維持する上で非常に重要な役割を果たします。定期的な運動習慣を確立することは、ホルモンバランスの変化によるさまざまな症状の緩和と、健康の向上につながります。
・有酸素運動
有酸素運動は、心血管系の健康を促進し、全身の持久力を高める効果があります。 ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの適度な有酸素運動を週に数回おこなうことで、体重管理や血圧の安定化、コレステロール値の改善などが期待できます。また、有酸素運動は、ストレス解消や幸福感や満足感に関与する脳内物質セロトニンの分泌促進にも役立ち、気分の向上や睡眠の質の改善にも役立ちます。
・ストレッチや筋力トレーニング
ストレッチや筋力トレーニングも、更年期の体調管理には重要です。ヨガやピラティスなどのストレッチ運動は、柔軟性を高めさせ、筋肉の緊張をほぐします。また、呼吸法やリラクゼーション法を取り入れることで、自律神経のバランスを整え、ストレス対処能力を高めることができます。
一方、筋力トレーニングは、筋肉量の維持と骨密度低下の防止に役に立ちます。 更年期に伴う骨密度の低下を防ぐためにも、適度な負荷の筋力トレーニングを取り入れることが推奨されています。
更年期の女性にとって適度な運動は身体機能の維持だけではなく、更年期症状の緩和、リフレッシュにもつながります。
更年期におけるストレス管理は、心身の健康を維持する上で極めて重要な要素です。この時期の女性は、ホルモンバランスの変化に加え、家庭や職場、対人関係などでのストレスにさらされることが多く、ストレスの対処法を身に付けることが求められます。
・リラクゼーション
ストレス軽減において特に有効なのが、リラクゼーション法の活用です。ヨガや瞑想、深呼吸などは、自律神経のバランスを整え、心身の緊張を解くほぐす働きがあります。ストレスによる心身の疲労を回復させ、更年期症状の緩和にもつながります。
ヨガのポーズには、血流を改善し、筋肉の柔軟性を高める効果も期待できます。呼吸法により、気分の安定や集中力の向上にも役立ちます。深呼吸は、体に酸素を十分に取り込み、リラックス反応を考えるのに効果的です。
・趣味や社交活動の参加
また、ストレス管理において欠かせないが、趣味や社交活動への積極的な参加です。自分の好きなことに没頭することで、日常のストレスから離れ、心身をリフレッシュさせることができます。同じ趣味を持つ仲間とのつながりは、精神的な支えになります。社交活動への参加は、人間関係の充実感を得る機会にもなります。新たな視点を得ることで、ストレスに対する耐性を高めることもできるでしょう。
これらのストレス管理をおこなうことで、更年期症状の緩和や心の安定が促進されます。
更年期における良質な睡眠は、身体的・精神的なものを維持する上で欠かせない健康要素です。ホルモンバランスの変化に伴うさまざまな症状は、睡眠の質に大きな影響を与えます。
・睡眠環境を整える
睡眠の質を高めるためには、睡眠環境を整えることを心がけましょう。快適な寝具を選ぶことは、安眠のために大きな役割を果たします。体圧分散に優れたマットレスや、温度調節機能のある寝具を使用することで、体の負担を軽減し、深い睡眠を得ることができます。また、寝室の環境を整えることも重要です。適度な温度設定と遮光カーテンの使用により、涼しく暗い空間を保つことで、睡眠の質が向上します。
・規則正しい睡眠リズムの確立
規則正しい睡眠リズムの確立も、更年期の睡眠に関して重要な要素です。毎日同じ時間に就寝し、起床することを心がけましょう。一定の睡眠スケジュールを維持することで、体内時計が整い、自然な睡眠リズムが形成されます。また、就寝前のリラックスタイムを持つことで、心身の緊張を意識し、スムーズな入眠を取り入れることができます。
・生活習慣の見直し
さらに日中の生活習慣にも注意する必要があります。 適度な運動や日光浴は、夜間の睡眠の質を改善する効果があります。また、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトが睡眠に影響を与える可能性があるため、控えましょう。
更年期の女性にとって十分な睡眠は、ホルモンバランスの調整や自律神経の安定化を促し、更年期症状の緩和につながります。
更年期における身体の変化は、日常生活に大きな影響を与えます。
・頻尿や尿漏れ
頻尿や尿漏れは、更年期の女性にとって切実な問題の1つです。骨盤底筋トレーニングは、これらの症状の改善にとても効果的です。
骨盤底筋は、膀胱や子宮、直腸を支える筋肉群であり、その機能低下が尿漏れなどの原因になります。 定期的な骨盤底筋エクササイズをおこなうことで、筋力を強化し、尿漏れの軽減や予防につなげることができます。骨盤底筋を意識的に制限・弛緩させる運動や、深呼吸と組み合わせたトレーニングなどが推奨されています。
・性交痛
性交痛は、更年期に伴う腟の乾燥が主な原因の1つです。 エストロゲンの低下により、腟の粘膜が敏感になり、潤いが失われることで、性交痛や不快感が生じます。これには水溶性の潤滑剤の使用が有効です。 潤滑剤を適量塗布することで、腟内の潤いを補い、摩擦を軽減することができます。
・皮膚の変化
更年期における皮膚の変化は、乾燥やターンオーバーの乱れが大きく影響しています。エストロゲンの減少により、皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸の生成が低下し、保水力が失われます。肌のタイプに合わせた保湿剤で肌を保湿しましょう。
また、肌の健康は内側からのサポートも重要です。ビタミンや抗酸化物質を豊富に含む食品をとることがおすすめです。特にビタミンEやC、オメガ3脂肪酸を含む食品を積極的に摂取することで、肌の健康維持に貢献できます。
更年期における適切な情報の入手とサポートの活用は、この時期を乗り越えていく上で重要なことです。
・自分に合った正しい情報を入手
信頼できる医療機関や医師が監修しているウェブサイトの記事などから知識を得ることで、自分に合った対処法を見つけ、不安や戸惑いを軽減することができます。
・家族や友人とのコミュニケーション
家族や友人とのコミュニケーションも、更年期のサポートにおいて重要な役割を果たします。身近な人々と自分の経験や感情を共有することで、理解と共感を得ることができます。お互いの情報を共有し、支え合いながら更年期の課題に向き合うことが大切です。
・更年期の女性と交流
更年期を経験している他の女性との交流は、精神的な支えとなります。同じ境遇の仲間と出会い、経験を分かち合うことで、お互いの理解と励ましを得ることができます。
更年期のセルフケアは、症状の緩和と日常生活の質の向上に役立ちます。 正しい情報の入手と実践により、自分に合ったケア方法を見つけ、自信を持って更年期の変化に対応していけます。ただし、症状が重度である場合や自己管理だけでは改善が見られない場合は、医師に相談することが重要です。
では、更年期の症状が出た場合の受診の目安や治療を受けるまでの流れ、そして実際にどのような治療があるのかを詳しく紹介します。
更年期症状は個人差が大きく、症状の程度はさまざまです。ほとんどの女性が更年期症状を経験しますが、日常生活に支障を来す症状があれば更年期障害の可能性があります。つらい症状を感じたらまずは婦人科で相談しましょう。
婦人科を受診する際は、気になる症状や生理周期、既往歴、家族の病歴、現在服用中の薬剤について正確に伝えられるようにしておきましょう。これらの情報は、正しい診断と治療方針の決定に役立ちます。
まずは、子宮がんや子宮筋腫、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)などの婦人科疾患の有無を確認するための検査がおこなわれます。そして生理の状態やホルモン値の検査結果を総合的に判断することで、更年期障害の診断が下されます。
更年期障害と診断された場合、婦人科での治療がスタートします。治療方針は個々の症状や重症度、患者の希望を考慮して決定されます。
主な治療法としてホルモン補充療法(HRT)、漢方治療、そしてエクオールのサプリを摂取する方法があります。
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害の治療において中心的な役割を担う方法です。この療法は、更年期に低下する女性ホルモンのエストロゲンを外から補充することで、更年期症状の緩和を図にます。
ホルモン補充療法には、内服薬、貼付薬、ジェル状の塗り薬、経腟薬の4種類があり、患者のライフスタイルや治療目的に応じて、最も適したタイプが選択されます。
ホルモン補充療法は、特にホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)や発汗といった血管運動神経症状に対して高い効果を発揮します。治療開始から1~2カ月ほどで症状の改善が見られ始めます。そのため、2~3カ月後に薬の効果判定をおこないます。なお、萎縮性腟炎に対しては、座薬(腟錠)が主に用いられ、1週間から10日で程度の効果が現れます。
ホルモン補充療法を5年以上使用する場合は乳がんのリスクが上がるといわれていた(※)ため、通常2~5年くらい使用しますが、5年で必ずやめなければならないということではありません。そのリスクと治療効果を考慮しながら検討します。いきなりやめるとまた症状が出てしまうこともあるので、生活環境を整えたり、セルフケアなども取り入れながら、だんだんと減量し、ゆっくりやめる方向へ持っていきます。
※2004~2005年に厚生労働省研究班が調査をおこない、ホルモン補充療法経験者が乳がんになる危険性は、ホルモン補充療法未経験者の半分以下だったという結果を公表しています。その後の研究でも、ホルモン補充療法が乳がんの発症に与える影響は、肥満やアルコール摂取、夜勤の仕事などが与える影響と同程度の小さいものであることがわかっています。
また、最近では張り薬や塗り薬は使っていてもいなくても、乳がんや血栓症を発症する確率は変わらず、逆にホルモン補充療法をしている人のほうが全体のがん発生率が下がるといわれています。
更年期障害の治療において、漢方薬は症状に応じた有効な選択肢の1つです。漢方薬は、体質や症状に合わせて処方される伝統的な薬剤であり、更年期症状の緩和に役立ちます。代表的な漢方薬には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)などがあります。
・桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)や頭痛に対して効果が期待できる漢方薬です。比較的体力がある人に適しています。
・当帰芍薬散
当帰芍薬散はめまいや立ちくらみ、肩凝り、足腰の冷えなどに効果があります。冷え性で疲れやすい人に適しています。
・加味逍遥散
加味逍遥散は、イライラ、落ち込み、不安といったメンタル不調や、めまい、冷え症に効き目があります。虚弱体質で精神的な不安を抱えている人に適しています。
漢方薬の効果の出現には個人差がありますが、早い場合では飲み始めてから2週間ほどで現れることもありますが、一般的には1カ月目あたりから効果が実感できるようになります。2~3カ月使用して十分な効果が得られない場合は、処方内容を見直し、患者に最も合った漢方薬を見つけていきます。
漢方薬は、西洋医学とは異なるアプローチで更年期症状に取り組みます。体質や症状に応じた漢方薬の選択により、ホルモンバランスの調整や自律神経の安定化、血流の改善などが期待できます。 漢方薬は副作用が少なく、比較的少しの摂取が可能ですが漢方薬の選択や服用期間は、医師と十分な相談の上で決めることが重要です。
大豆イソフラボンがエストロゲンと似た働きをするといわれていますが、エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内代謝によって生成される物質です。このエクオールが、更年期症状の緩和に期待されています。
ただし、エクオールを腸内で産生できる人は、日本人の約半数といわれています。自分がエクオール産生者であるかどうかを確認するために、「ソイチェック」と呼ばれる検査を受けることがございます。この検査により、エクオールを効率的に産生できる腸内環境を持っているかどうかを判定することが可能です。
エクオールを産生できない人にとっては、サプリメントによるエクオールの補充が有効な選択肢となります。ただし、サプリメントのみに頼るのではなく、大豆製品などの良質なたんぱく源を食事に取り入れることも大切です。
更年期障害の治療においては、ホルモン補充療法、漢方療法以外にも、症状に応じてさまざまな薬物療法が用いられることがあります。抗うつ薬や抗不安薬は、セロトニンやノルエピネフリンなどの神経伝達物質のレベルを調整することで、更年期に伴うイライラや落ち込み、不安感などの改善に一定の効果が認められています。
しかし、薬物療法には副作用やリスクが伴う可能性があることに注意が必要です。抗うつ薬や抗不安薬の使用は、医師との十分な相談の上で決定し、定期的なモニタリングを受けましょう。また、薬物療法と並行して、カウンセリングや認知行動療法などの非薬物療法を取り入れることで、更年期症状の総合的な管理を進めることができるでしょう。
更年期障害の治療に関して、複数の診療科を受診することがあるかもしれません。そんなときに、何でも相談できるかかりつけの婦人科を持っておくと、適切な治療方針を提案してくれる心強い存在になります。
自分の判断で症状ごとに専門の医療機関を受診すると、同じような検査を何度も受けることになり、医療費の増加につながります。
一方、かかりつけの婦人科に定期的に診てもらうことで、病歴や体質、生活環境などを医師が十分に理解した上で、本質的な治療法を提案してくれます。
更年期障害は、身体的な症状だけでなく、精神的な不調を伴うこともあります。必要に応じて他の診療科への紹介連携もしてくれ、総合的な治療体制を整えることができます。
更年期は女性の人生における大きな転換期ですが、適切な医療サポートを受けながら、この時期を乗り越えていくことが可能です。同時に、生活習慣の改善やストレス管理、運動などを取り入れることで、更年期症状の緩和と健康の維持が期待できます。周囲の理解と協力を得ながら前向きに更年期の旅路を歩んでいきましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
イラスト/村澤綾香
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