- 2025.12.02
- 親子関係, ジェネレーションギャップ, 人間関係, 40代,
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夕食後テレビを見ながら、母はよく手芸をしていました。それはお弁当袋の裁縫だったり、時に編み物だったり。「テレビを見るときくらいゆっくりしたら?」と言うと、「老化防止! 何より気晴らしになるのよ」と言っていた母。そんな母を見て育ったのに、私自身は手芸に興味を持つこともなく、真剣に向き合ったこともありませんでした。しかし、40代に突入して「手作り」について考えさせられる事態が次々と発生したのです!

2年前、娘が入園する幼稚園の入園説明会が実施されました。配布された資料に入園前に用意するグッズが明記されていて、その内容に衝撃。それぞれサイズ指定のある絵本袋・着替え入れ・上履き入れ・お弁当入れ・コップ袋など。「手作り」といった指定はありませんでしたが、説明会終了直後から周囲のママたちは、安く材料を調達できる店やそれぞれの作り方の話題でもちきりに。そもそも私は、ぞうきんですら3枚100円のものを迷わず買うタイプ。「手作り」で用意するなんて考えたこともありません。
そこで私が最初にしたことは、既製品でも構わないか、サイズが数cm異なっても問題ないかを恐る恐る園に問い合わせることでした。園の承諾をいただき、ネットで検索。日本製でハンドメイド、ポップなデザインを売りにするサイトを見つけ、娘と一緒に柄を選んで購入しました。私がしたことは、届いた商品にアイロンで名前シールを貼り付けることだけ。娘も気に入り、大事に使ってくれているので結果的には満足ですが、当時は周囲の手作りムードに動揺し、後ろめたさすら感じていました。

昨年、ママ友に誘われ、町内イベントのボランティアに参加。そこで、人生初となる編み物にチャレンジしました。1つの作品を各自のレベルに合わせてパーツ分けしてみんなで編み上げていくというものです。編み物未経験者は経験者から教えてもらえるという告知もあり、参加を決めました。「手作り」に対する後ろめたさが、イベントによって少しでも薄まればいいなという期待があったのです。
ボランティアにはママ友だけでなく町内から幅広い年齢の方が参加しており、初めて会った人も含め、みんなで輪になっておしゃべりをしながら作業をしていました。共通の趣味を持つ人たちの輪はこうやって広がっていくんだなと、新しい世界を見た気がしました。実際に編み物を教えてもらうと、手が思うように動かず、われながらうんざり。おしゃべりしながらの作業など程遠く、私だけ必死です。このままではイベント自体を楽しめなくなると感じ、モヤモヤしながらも編み物は断念。100円ショップで購入したキットに毛糸を巻き付けて、ふわふわのボンボンを作るという簡単な作業に専念しました。

今年の4月。新型コロナウイルスの影響で、「登園の際は手作りマスクの工夫をする等、マスクの着用についてご協力をお願いします ※裏面に手作りマスクの参考資料あり」という園からの手紙を受け取って凍り付きました。このタイミングなので登園にマスクが必要なのは想定内でしたが、「手作り」のすすめは完全に想定外。こわごわ裏面を確認すると、手作りマスクのイラストと簡単な説明が。どうしたもんかと考え込んでしまいました。
自宅にある子ども用布マスクは1枚。洗い替えなどを考えると、あと2枚は欲しい。今度こそ「手作り」と真剣に向き合う機会なのか? ネットで手作りマスクに必要なガーゼやゴムを検索しましたが、品切れが目立ちます。作れるかどうかもわからない自分が材料を購入することで、本当に必要としている人の元に材料が届かない状況を生んでしまうのでは?と、普段は楽観的な私もさすがに悶々としました。くだんの手紙を読み返し、心もとない道具で私がなみ縫いして作った不安なものを使わせるより、マスクを正しく装着して安全に登園させるという目的達成のためにも、プロが作った布マスク製品を購入しようと心を決めました。
私は「手芸力」が必須とは思いません。ただ40歳を過ぎて、これまでまったく興味がなかった「手作り」に少しずつではあっても向き合おうとしていることに自分でも驚いています。ネットで調べると、体の一部を使う活動は脳の老化防止・活性化も期待できるとのこと。人とかかわり、コミュニケーションを取りながらおこなうとさらに効果が期待できるそうです。子どもの手が離れたときの趣味の1つとして、選択肢にあってもいいかもしれないと感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
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