「まだ胎動を感じないの」不安を打ち明けた私に夫が放った言葉。耳を疑う内容だった
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「年を取ると根気や集中力がなくなる」。母や周囲の年上の人からよく言われてきたことでした。もともと気のりのしないことに対してではなく、大好きな趣味や一生懸命な仕事にすら根気が続かず面倒くさいとなってしまったら、少々寂しいものだなあと思っていました。
40代に入った私も、大好きな趣味ですら妥協する気持ちになってしまい自分でも驚きました。そんなとき、大先輩が言った意外な言葉にすてきなヒントをもらいました。
私の趣味は刺しゅう。ハーブやバラの色合いを色とりどりの刺しゅう糸で刺していくのが、至福の時間です。花や葉の模様や質感を表現するために、色を変えたりステッチを細かく変えたりと自分なりにこだわって制作しています。作品を作っていたある日、左右対称の作品のある部分から左側だけステッチが間違っていたことに気付きました。しかも結構長い間、間違ったまま刺し続けていたのです。
がっかりしたのなんの、私はすっかりやる気を失ってしまいました。そして、こう思ったのです。作品展に出すものでもないし、ぱっと見てわかる人なんていない。やり直すなんてばかばかしい、このまま気付かなかったことにして刺し終えてしまおうか。そして、そう思った自分に驚きました。以前の私なら、すぐさまほどいてやり直していたでしょう。でも、40代になって目も痛いし肩も痛い、何より気持ち的にもう1度やり直すのが、面倒くさいのです。
あんなに好きでこだわっていた刺しゅうで根気が続かない。それは自分でも少なからずショックなできごとでした。不安を紛らわすため、職場で同年代の同僚たちにその話をすると、皆「わかるわかる」と同意してくれました。年齢とともにせっかちになって、根気や集中力が続かなくなってきたと口をそろえて同意してくれるのです。私はちょっと安心しました。
ある日、何気なく職場の大先輩に同じ話をしました。すると、意外なことに「私は、年を取ってからのほうが根気があるわ」という言葉が返ってきたのです。話を聞いてみると、若いころから40代くらいまではなんでも簡単に投げ出していたけれど、もっと年を取ってからは淡々とコツコツと達成することに喜びを見い出せるようになったと。
「たくさん失敗もしてきて、なんでもやり直せるって知ってるからよ」と、なんでもないことのように言う大先輩を見て、もしかして今とても大事なことを教わったのではないかという気がしました。
ひとりになったときに、先輩の言葉をヒントに私なりに考えてみました。思うに、40代までは体力でも考える力でもそれなりに右肩上がりで伸びてきていたわけです。今、初めて老化という下り坂の状態に直面して、私の心は無意識にやけになっているのかもしれません。肩も痛い、目もかすむ、物もよく忘れる、ああもうイヤになっちゃう、やる気が出ないという論理です。
でも、体の老化とうまく付き合い、さらに受け入れることができれば、いちいちやけになるようなこともないでしょう。むしろ、先輩の言う通り人生経験を積んだ分、先を見通す力が養われて淡々と根気よく取り組むことができるようになるかもしれません。そう考えると、老化と根気は関係がないと思えてきました。
結局、刺しゅう作品はやり直すことにしました。もう、あまり面倒くさいなどとは思いませんでした。逆にまた間違えたら、またやり直せばいいかといったなんだか軽々とした気持ちになっていました。
私は、大好きな趣味で失敗をあきらめそうになったとき、疑いもなく年齢のせいなのだと思い込んでしまいました。でも、先輩が言った「年を取ったほうが根気強く頑張れる人もいる」という事実を考えると、経験と気持ちをうまく持っていけば、たしかに誰だって年を取っても賢く、根気強く取り組める人になれるかもしれないと思ったのです。体の老化は気になりますが、一緒に気持ちまで「できない」のループに入る必要はないのです。それはとてももったいないことだと気付かされたできごとでした。
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