更年期に差しかかっているという作家の森美樹さん。「不調を感じたら自分がラクになるような逃げ道を作ってあげるようにしています」#3

更年期に差しかかっているという作家の森美樹さん。「不調を感じたら自分がラクになるような逃げ道を作ってあげるようにしています」#3

嫌悪感すら抱いていた母親が突然、死んだ。40歳の珠美子は母親・園枝の死の謎を追うなかで、仲睦まじかったはずの両親の秘密や園枝と親密な関係の25歳の青年の存在を知っていく。母親として妻として、完璧な役割を果たしてきたはずの園枝が人生の最後に望んだものとは――。

現代を生きる女性たちの孤独と光を描いた『主婦病』で多くの読者の心をつかんだ森美樹さんは、最新刊『母親病』で家族や母親のあり方に真正面から斬り込んでいます。インタビュー3回目は、母親病』の執筆秘話のほかに更年期の過ごし方についてもお聞きしました。

★前回:複雑な家庭環境で育ち介護職の資格を持つ作家・森美樹さん。「『母親病』では自分の経験が役立ちました」#2

『母親病』はハッピーエンドの物語であって欲しい

――4話目の「家族の絆」は『母親病』の総まとめ的な位置づけです。この作品は雪仁の視点で物語が進んでいきます。

森さん 実は、当初は珠美子の視点の物語で終える予定だったんです。でも、1話目の「やわらかい棘」も珠美子視点でしたし、編集者さんからちょっとひねりを加えたほうがいいのではないかというアドバイスをいただき、丸っきり新しい作品を書きました。

――園枝の死の裏側にあったものを知ることで、珠美子と雪仁は血縁にこだわらない家族の形に気付いたのだと感じました。

森さん 珠美子にしてみれば、自分が思っていた母親像が崩れることで初めて園枝の人間らしい一面を知ることができました。それは珠美子にとって良いことのような気がしています。

――衝撃的なできごとが次々と起こる『母親病』ですが、ハッピーエンドの物語だったということでしょうか。

森さん はい。そうあって欲しいと願っています。

コロナ禍によって意識が変わり作品にも影響を与えた

――『母親病』の完成までには、どれくらいの時間がかかっているのでしょうか?

森さん 編集者さんから「うそ偽りのない大人の恋愛小説を読ませていただきたい」とお話をいただき、企画がスタートしたのが3年ほど前です。当初は恋愛がメインの連作集にする予定でした。でも、その間に私の意識が変わったこともあり、血縁から逃れた家族の形というテーマに軸足が移ったような感覚です。

――昨今のコロナ禍も森さんの意識に影響を与えたのでしょうか?

森さん 自分にとって本当に大切なものはなんなのかを考えてみたりとか、コロナ禍で明らかに意識が変わりましたね。

――森さんにとっての、本当に大切なものとは?

森さん 母や夫を含め、今の家族です。それから、外出の機会が減って本当に大切な友だちとだけ連絡を取り合うようになり、良い意味で縁が減ってきたんですね。ですから、今ここにあるご縁を大切にしようとも思いました。

――『ウーマンカレンダー』の読者世代には、『母親病』をどんなふうに読んでもらいたいと思っているのでしょうか?

森さん どの年代にも大変さはあると思うのですが、私自身、女性の40代から50代というのは一番、体の変化が激しくて、かつ無理をしがちな年代だと実感しています。『母親病』を通して、子どもやご主人や親御さんよりも、まずは自分のことを大事にするという意識を持っていただければと思っています。

更年期の年代は自分自身をいたわることが大切

――森さん自身は、具体的にどんな体の変化を感じているのでしょうか?

森さん 年齢的に更年期に差しかかってきたこともあり、同世代の友だちと会うと「最近、やたらと暑いね」など、自分の不調の話になることが多いんです。でも、「暑いな」と感じても、「今、夏だから暑いんじゃない?」って思ってみたりとか。自分自身がちょっとラクになるような逃げ道を作ってあげるようにしています。

――更年期の年代に、心身ともに元気に過ごすために心がけていることを教えてください。

森さん ヨガとピラティスは週に2回、続けています。あとは寝ることですね。ちょっと疲れを感じたら、寝るのが一番です。

――ちなみに、疲れて眠って翌朝、寝坊してしまうこともありますか?

森さん もちろん、あります。私には子どもがいないので、朝寝坊をしてもさほど支障はないのですが、世の中には寝坊をした自分に落ち込んでしまう女性もいらっしゃると思います。でも、そんな自分を許してあげて欲しいですね。少し前に“ポテサラ論争(総菜コーナーで子ども連れの女性が高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたことをきっかけに、インターネットやSNS上で巻き起こった論争)”がありましたが、ポテトサラダを買ってもいいと思うんです。自分をいたわるためにも、手を抜けるところはじょうずに抜くことは大切だと思います。

――最後に、今後の目標を教えてください。

森さん 自分の作品に対する感想はいろいろと見たり聞いたりしていまして、割と賛否が多いんですね。「気持ち悪い」「グロい」「生々しい」といった感想に落ち込んで、書くジャンルを変えようと思ったこともあるくらいです。でも、私の作風を好いてくださる読者の方もいらっしゃいますから。これからも貫いて書き続けていきたいと思っています。

●プロフィール
森美樹(50歳)1970年埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。その後、5年間の休筆期間を経て、2013年「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、女による女のためのR-18文学賞を受賞。主な著書に受賞作を収録した『主婦病』、『私の裸』など、参加アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。

『母親病』森美樹著 新潮社 1850円(税別)

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