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受診していない人を含めると日本には約4300万人もの高血圧患者がいると推定されています。「血圧が高い」といわれても、自覚症状がないとさして気にならないもの。一体高血圧の何がそんなにいけないのでしょうか? 高血圧・糖尿病などの生活習慣病を専門とする工藤内科院長の工藤孝文先生に解説してもらいました。
★関連記事:血圧が上がりやすい「やりがちNG」って?血圧を上げないためにしたいこと・ダメなこと【医師解説】
監修/工藤孝文先生
工藤内科院長。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学し、帰国後、大学病院などを経て現職。糖尿病・ダイエット指導・漢方治療を専門とし「ガッテン!」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)等メディア出演多数。『疲れない大百科』(ワニブックス)、『おいしく飲んでみるみるやせる 緑茶コーヒーダイエット』(日本実業出版社)等著書多数。
高血圧はよくホース内の水流に例えられます。ホースが目詰まりすると、水の勢いが強くなって圧力が高まります。また水の量が増えると流れに勢いが出て、水圧が上昇。
同じように高血圧になると血管に常に大きな力がかかるため、血管の内壁が傷ついたり弾力が失われたりして硬くなります。血管が硬くなると血流のスピードや圧力を調整しにくくなり、さらに血管は硬く厚くなって動脈硬化につながるのです。
高血圧は自覚症状がないことが大きな問題といえます。日常生活に不都合がなければ改善しようという気持ちになりにくく、知らないうちに進行して血管、心臓、脳などにさまざまな障害をもたらします。そして最悪の場合には、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞を起こして命を落としてしまうことも。これが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえんです。
高血圧で起こる主な合併症
・心肥大
・心不全
・虚血性心疾患(狭心症・脳梗塞)
・脳出血
・脳梗塞
・くも膜下出血
・慢性腎臓病
・糖尿病性腎臓病
・大動脈瘤
・大動脈解離
・閉塞性動脈硬化症
高血圧になると血液の巡りが悪くなり、栄養や酸素が肌細胞まできちんと運べなくなります。すると老化が進み、老け顔になることも……。血圧やコレステロール値が高いままでは、高価な美容液を使っても効果薄。美容のためにも内側から健康になることが求められます。
高血圧は老化現象の1つですが、生活習慣も大きな要因に。血圧上昇を招く行動の積み重ねが症状として出てくるのです。つまり早い段階で予防ケアをすることが重要。「正常血圧」を越えたら生活を振り返り、できるところから改善しましょう。
血圧値は以下のように分類されます。血圧は収縮期血圧(最高血圧)が120未満、拡張期血圧(最低血圧)が80未満が正常とされています。正常高値血圧は、高血圧の一歩手前で注意が必要なレベルのことをいいます。高血圧にはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3段階に分けられます。
■成人における血圧値の分類(mmHg)
分類 | 診察室血圧 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | 家庭血圧 |
収縮期血圧 (最高血圧) | 拡張期血圧 (最低血圧) | 収縮期血圧 (最高血圧) | 拡張期血圧 (最低血圧) | |
正常血圧 | <120 | <80 | <115 | <75 |
正常高値血圧 | 120-129 | <80 | 115~124 | <75 |
高値血圧 | 130-139 | 80ー89 | 125~134 | 75~84 |
Ⅰ度高血圧 | 140ー159 | 90ー99 | 135~144 | 85~89 |
Ⅱ度高血圧 | 160ー179 | 100ー109 | 145~159 | 90~99 |
Ⅲ度高血圧 | ≧180 | ≧110 | ≧160 | ≧100 |
※血圧は条件によって変化するため、病院・クリニックなどで測る血圧を診察室血圧、自宅で自分で測る血圧を家庭血圧と呼びます。
血圧の状態を把握するためにも計測は欠かせません。血圧計を自宅に用意し、朝晩の1日2回計測するのが理想的です。血圧は一定ではなく、時間帯や行動、環境によっても変動します。計測を日課にすることで、自分の血圧変動のパターンを知ることができます。
血圧を上げる2大原因は塩分の過剰摂取と内臓脂肪。つまり、食生活の見直しと運動が高血圧予防の基本です。
外食やテイクアウトは塩分、カロリー過多になりやすいのでメニューの選び方を工夫しましょう。麺類はスープに塩分が多く含まれているので半分残すと減塩に。パンとご飯が選べるのであれば塩分ゼロのご飯にすると良いですね。
運動は全身の筋肉の6~7割を占める下半身を中心に体を動かすのもおすすめ。隙間時間にスクワットをする、できるだけ階段を使うなど「ながら運動」であれば忙しい人でも続けやすいでしょう。
ストレスを感じると交感神経が活発になって、血管が収縮し血圧が上がります。血圧上昇を防ぐには、できるだけイライラしないことが大切。
リラックス効果を得るには39~41度のぬるま湯に10分ほどつかるのがおすすめです。血流が良くなることで、血管内皮細胞が刺激されて「NO(一酸化窒素)」の産出が活発になる効果も期待。NOには血管を拡張して血圧を下げる働きがあります。
また入浴後30分~1時間以内に就寝すると良質な睡眠が得られるように。ただし湯温が42度を超えると交感神経が優位になり血圧が上がってしまうので注意しましょう。
ぎゅっと力を入れて血流をいったん止めてから脱力して開放すると、血管が収縮・拡張されます。すると血流が良くなるだけでなく、NOが産出されて血圧降下作用が得られます。
この効果を手軽に得られるのが「手を握る/開く」を繰り返すストレッチ。1日1~2セットおこないましょう。
【1】1秒間に1回のペースで片手をぐっと握り、開くことを60秒続ける。
【2】反対の手もおこなう。
プラスαの対策として無理なく取り入れてみてください。
血圧は健康状態を知らせる体からのサイン。高い数値をキャッチしたら自分の行動を振り返る良い機会だと思い、少しでも生活習慣を見直せるようにしてはいかがでしょうか。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
取材・文/中澤夕美恵(51歳)
出版社、編集プロダクションを経てフリーになって約20年。2021年よりスポーツジム通いに目覚め、せっせと運動に励むものの1年で1kgしか減量しておらず、ズッコケる。いつか痩せると信じて今日もジムへ……。
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