- 2025.02.15
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私は子どものころから本を読むのが好きでした。ジャンルはさまざま、推理小説や青春ものに時代もの。小説に限らず少女マンガや胸キュンもののマンガ原作のドラマや映画も大好きです。でもアラフィフになって、ハラハラドキドキのストーリー展開は、少ししんどくなってきました。加齢のせいか、気持ちも頭もついていけないと感じることが増えてきたからです。そんな今、惹かれ始めたのは人生経験を積んできたからこそわかる落ち着いた大人の恋愛小説。アラフィフになって出合った珠玉の3冊をご紹介します。
登場人物は50歳の男女。地元の印刷会社で働く離婚歴のある青砥健将と、病院の売店で働く夫と死別した須藤葉子。中学のころの同級生だった2人。35年ぶりの再会から始まる2人の約2年の日々がつづられた物語です。
読み始めてすぐに、2人の恋愛がどのような結末を迎えるかが書かれています。読み進めていくうちに、結末がわかっているからこそのせつなさが胸に迫ってきます。劇的な展開があるわけではないのですが、静かな哀しみやささやかな喜びが描かれていて、ストーリーに引き込まれます。
私は葉子ほど波乱万丈な人生を送ってきたわけではありません。それでも今までそれなりにつらいことや悲しいことも経験しました。それだからこそ、お互い惹かれあっていても、若いころのように勢いで前に進むことはできず、相手のことを思って、あと一歩が踏み込めない気持ちはよくわかります。葉子はただ、ちょうどいい幸せを望んでいただけなのに。でも、ちょうどいい幸せというのが実はなかなか難しいのだということも、アラフィフになるとなんとなくわかってしまうのです。まるで自分のことのように思えることも多く、あっという間に読んでしまいました。
天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。40歳前後で出会った2人が運命に翻弄されるせつない大人の純愛物語です。3回しか会っていないのに、心の深い部分で結びつき惹かれ合う2人。しかし運命のいたずらでなかなか結ばれず、そのドラマチックな展開にページをめくる手が止まりませんでした。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです」。 洋子が過去について悩んでいるときに聡史がかけたこの言葉は、私にとっても忘れられません。私も過去に子育てや夫婦関係において後悔することがたくさんありました。これまでは、過去は変えられないし忘れるしかないと思っていました。でも、自分が作り出す未来によって過去も変えられる。本当に前向きになれる言葉ですし、今を大切に生きようと思えました。このほかにも、アラフィフの私の心に響く言葉がたくさん詰まった作品です。
福山雅治、石田ゆり子主演で映画化され、私も早速観に行きました。小説の世界観がそのままで、素敵な映画でした。小説では想像しかできないギターの音色が物語を感動へと導いてくれていました。
題名が示す通り、本書は主人公・一之瀬廉太郎の妻である杏子が、余命を宣告されるところから亡くなるまでの日々を描いた作品。
廉太郎は70歳、亭主関白で昭和の頑固親父といった感じです。夫や私の父親でもこんなにひどくないんじゃないかと思うほど、家では何もせず威張っています。独立している娘2人にも煙たがられ、読んでいる私も腹が立つくらい。
妻の杏子は専業主婦で、これまた文句も言わず家事を完璧にこなす昭和のお母さん。杏子は自分の余命を知り、廉太郎が何もできないのは、私のせいかもしれないと思います。そこから杏子は廉太郎が独り立ちできるように、いろいろと教えていきます。妻がどんどん弱っていく姿を見て、初めは反発していた廉太郎も変わっていきます。
ドラマチックな展開はありませんが、年老いた夫婦が今までさまざまな思いを抱えて生きてきた最後に到達する愛と呼ぶべきでしょうか、家族愛、夫婦愛の究極の姿を見た気がします。そして自分の死を見つめ、人生を振り返る時間の尊さを感じました。夫と私、どちらが先に逝くかはわかりませんが、私も少し先の将来、このような時間を夫婦で過ごすことがてきたらいいなと思えた小説でした。
50歳になって、大人の恋愛小説がしっくりくるようになってきました。自分では体験できない世界を味わうことができるのが小説の醍醐味の一つだと思います。でも、自分と同じ年代の主人公が悩んで落ち込んだり、頑張って前を向いたりする姿に、わかるわかると共感しながら読むのも味わい深いものです。大人の恋愛といっても不倫やドロドロではありません。胸キュンともまた違い、人生経験を経てたどり着いた心を寄せ合うような関係。そこになんとも言えない心地良さを感じるのです。誰かにおすすめしたい、本当に出合えて良かったと思える3冊でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
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