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「歯科インプラント」という言葉を耳にしたことはありますか? 歯科インプラントは高額で、治療が大変というイメージを持つ人も多いかと思います。実際のところはどうなのか、歯科インプラントについて歯科医師の古川雄亮先生にお伺いしました。
監修/古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、歯学府博士課程において歯のエナメル質形成に関わる遺伝子研究をおこないつつ、バングラデシュなどのアジア諸国で口腔衛生に関連した国際歯科研究に従事。その他、スウェーデンのイエテボリー大学での研修を修了。大学病院の医員を経験した後、南米のボリビアにおいてボランティア団体の力を借り外来・訪問歯科診療に参加。 2019年にNature系の雑誌に研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」が公開。現在は歯科臨床に従事する傍ら、多くの企業からの依頼で、セミナーや学会取材、医療関連記事の監修・執筆、歯科医師国家試験模擬試験の校閲など、さまざまな分野で活動している。
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私たちがよく耳にするインプラントという言葉は、体内に埋め込む医療機器や材料の総称なのだそう。インプラントと聞いて歯科をイメージするものは、歯科インプラントと呼称されているそうです。
「歯科インプラントとは、歯を失ってしまった場所(あごの骨)にねじを埋めて歯の形の被せ物を取り付ける治療を指します。
あごの骨にインプラント体というチタンを主な材料にした合金でできたねじを刺し、その上にアバットメントという被せ物とインプラント体をつなぐアタッチメントを取り付けます。そして被せ物を装着します。
最近ではインプラント体とアバットメントが一体型になっているワンピースタイプのものもあります。これは、被せ物とインプラント体の入れたい方向が一致していれば使用しやすいものです。
あごの骨の状態によってインプラント体と被せ物を入れる方向などが異なりますので、ワンピースタイプを使用できない場合もあります」(古川先生)
歯科インプラントの治療を受けられない方もいるのでしょうか?
「体が成長中である未成年は治療することができません。
それから、歯科インプラントの取り付けは外科手術になるので麻酔を使用します。そのため、妊娠中であったり、高血圧や心疾患、糖尿病などの全身疾患を持った方には手術ができない場合があります。
また、虫歯や歯周病についても先にそちらの治療をしてもらってから、歯科インプラントの手術をすることが一般的です。
他にもあごの骨が薄かったり骨密度が低いと、あごにインプラント体を埋め入れることができないかもしれません。
骨粗しょう症はなどで服薬をしていても、歯科インプラントの治療は受けられないことがあります」(古川先生)

歯科インプラントといえば何かと高額なイメージ。高額な分、しっかりとメリットを得たいものですが、どんなメリットがあるのでしょうか?
「入れ歯やブリッジ(欠損した歯の両隣を土台にして被せ物を取り付けるもの)と違って、自分の歯のような見た目としっかりと物をかめることは大きなメリットですね。
歯医者での定期的なメンテナンスは必要ですが、普段のケアは他の歯と同じように歯ブラシや歯間ブラシなどを使って清掃することも重要です。
あごの骨にインプラント体を埋めるので、骨と結合してしっかりと固定できて長持ちします。歯科インプラントは10年以上使用できる確率が90%を超えるといわれているくらい、長く使用することができます。
その上、骨がインプラント体を支えているので、骨が痩せるのも防止できます。
ただ、インプラント周囲炎という歯周病などによっては、歯科インプラントが外れてしまう自然脱落が起こることもあります。
一番のメリットは他の歯を削らずに温存できるところではないでしょうか。入れ歯やブリッジを付ける場合、隣の歯を削ったりすることもあるのですが、歯科インプラントではそういうことはありません」(古川先生)
逆にデメリットにはどんなものがありますか?
「保険適用外の治療なので、やはり高額なことだと思います。クリニックやメーカーによっても違いますが、1本あたり少なくとも30〜40万円程度かかります。
ただ、値段だけで決めず、検査の内容やインプラントの素材など内容を細かく見て判断したほうがいいでしょう。
治療期間は上あごか下あごかによっても異なりますが、治療期間は大体3カ月〜半年くらいかかります。下のあごのほうが骨がしっかりしているので、上に比べて治療期間が短くなっています」(古川先生)

「歯科インプラントの治療は外科手術に分類されます。そのため、クリニックでカウンセリングをした後、CT撮影や心電図、血液検査などの術前検査を受ける必要があります。
手術は1回法と2回法に分けられます。
歯茎を切開して、あごの骨にドリルでインプラント体用の穴を開けます。その穴にインプラント体を埋め入れるところまではどちらの手法でも同じです。
1回法では、そのままアバットメントを装着し、手術は終了になります。
2回法は、インプラント体を埋め込んだ後、一度ヒーリングアバットメントというカバーを設置して歯茎を縫合します。手術から2〜3カ月後にインプラント体と骨の結合具合を確認し、問題がなければもう一度歯茎を切開してカバーを取り外し、アバットメントを装着します。
2回法のほうがしっかりとをインプラントがあごの骨と結合してから被せ物を装着できるので、1回法よりも2回法をおすすめします」(古川先生)
歯科インプラントは一生使えるものなのでしょうか?
「基本的に一度歯科インプラントを付けたらそのまま使い続けることができます。被せ物やアバットメントが壊れてしまうこともありますが、その場合は壊れた部分だけ交換すれば大丈夫です。
もちろん、歯科インプラントを外すこともできます。
50代60代で歯科インプラントの治療を受けた方が年を取って、寝たきりなどで自分で歯磨きやうがいができなくなったときに、インプラントを取らなければいけないということが問題になっています。
また歯科インプラントは歯茎との結合が弱く、歯周病が進行しやすいデメリットがあります。
なので将来介護されることになった場合に備えて、自分がどのメーカーのインプラントを使用しているのかちゃんと確認しておくといいでしょう」(古川先生)
なぜ、メーカーの把握が必要なのでしょうか?
「インプラントはメーカーによって作りが違うので、メーカーごとに外し方も使用する器具も違っています。つまり、自分が使用しているインプラントのメーカーや種類がわからなければ、外すことができないということです。
歯科インプラントを付けてもらった病院であればどのメーカーを使っているかはすぐわかりますが、別の病院で除去してもらう場合、その病院はどのメーカーを使用しているか問い合わせない限りわかりません。
歯科インプラントは日本だけでも30社以上のメーカーがあり、世界規模で見れば100社を超えます。歯科医がすべてのメーカーを把握するのは難しいと言えるでしょう。
家族でも知らないという人は多いので、カウンセリングや装着時に歯科医師に詳しく聞いておくといいかもしれません。
50代以降でも歯科インプラントの治療を受けたいという方もいらっしゃいますので、その場合は介護などのリスクも考えてインプラントの本数を減らして、入れ歯と併用した治療を提案されることもあるでしょう」(古川先生)
厚生労働省によると、歯の平均寿命は49年〜66年なのだそう。なるべく長く自分の歯で生活したいものですが、もしそうでなくなった場合には歯科インプラントの治療を受けることも自分らしく生きる手段の1つなのかもしれませんね。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
取材・文/ウーマンカレンダー
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