
「年を取っても若々しくいたい」、「実年齢よりも若く見られたい」と思っている女性は多いのでは。そのためには、日ごろからどんなことに気を付ければいいのでしょうか。メディアでもおなじみの消化器内科医で美腸・美肌評論家の工藤あき先生に、老化の原因や「若見え」の対策についてお話を伺いました。
教えてくれたのは…
工藤あき先生
消化器内科医、美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、消化器内科医として、腸内細菌・腸内フローラに精通、腸活×菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また、漢方医として「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。NHK『ひるまえほっと』、フジテレビ『ホンマでっか!?TV』、テレビ朝日『ワイドスクランブル』などテレビ、書籍、雑誌監修などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。『老けない人が食べているもの』(アスコム)、『体が整う水曜日の漢方』(共著、大和書房)など著書多数。日本消化器内視鏡学会専門医・日本消化器学会専門医、日本内科学会認定医。
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日々の生活の積み重ねが「老け見え」に影響

――同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば老けて見える人もいます。その違いはどのようなところにあるのでしょうか?
工藤先生 細胞には寿命があるので、誰もが年齢とともに老化をしていきます。ただし、すべての人が年齢通りの老化をしていくわけではないんですね。年齢よりも老けて見えるか見えないかには、生活環境や食生活など、日々の積み重ねが影響を与えている部分が大きいんです。
――どのような生活習慣が老けて見えることにつながるのでしょうか?
工藤先生 細胞は酸化ストレスや糖化ストレス、紫外線ストレスなどによってより老化してしまいます。
酸化ストレスに関しては、人間には長い間、紫外線や有害物質による酸化と闘ってきた歴史があり、体内には抗酸化作用という対応能力が備わっているので過度な心配は不要です。ただ、抗酸化作用を十分に働かせるためには、たばこを吸わないことです。
気を付けたいのは、糖化ストレスです。糖化とは糖質とたんぱく質が熱に反応して起きる現象で、糖化が起きると老化や病気のもとになる物質「AGEs」が生成されます。
そもそも人間は飢餓状態で生きていた時代が長く、ここ数十年の飽食の時代に体が慣れていないんです。そのため、体には糖化に対抗するメカニズムができていません。実際、血糖値を上げるためのホルモンは複数ありますが、下げるホルモンはインスリンしかないのが現実です。
AGEsは、炭水化物や甘いお菓子といった糖質をたくさん摂取して血糖値が急激に上がったときに生成されやすいといわれています。高血糖が続くと糖尿病になってしまいますし、血糖値のコントロールは若々しさや健康の維持において重要です。
食事の順番や日常動作を意識する

――先生は毎日、たくさんの患者さんを診察していらっしゃいますが、糖尿病など生活習慣病の患者さんは年齢よりも老けて見えるのでしょうか?
工藤先生 一概には言えないのですが、糖化が進んで糖尿病と診断された患者さんの中には、ご自身の肌のことや見た目のことを気にされている方もいらっしゃいます。
――体の糖化を防ぐためには、どんなことに気を付ければいいのでしょうか?
工藤先生 まずは食生活です。炭水化物、野菜やきのこ、海藻類、たんぱく質をバランスよく摂取することが基本なのですが、食事の最初に炭水化物を食べると血糖値がポーンと上がってしまうんです。ですから、初めに野菜や汁物などを食べ、5分ほどたってからご飯やパンといった炭水化物を食べると血糖値の上昇が緩やかになり、糖化の予防に役立ちます。
あとは、運動も大切です。
――どんな運動をどれくらいするのがいいのでしょうか?
工藤先生 理想は1日に30分、週2~3回、少し息が上がる程度の運動です。ただ、現代人は忙しいですから、運動習慣を維持することは難しいですよね。
日本抗加齢学会の先生方の間では、ちょっとした日常動作で消費エネルギーを上げる「NEAT(ニート)」でもいいので、運動を指導していきましょうという話が出ています。
――NEATでは、例えばどんな日常動作をするのがいいのでしょうか?
工藤先生 女性は家事を利用するのがいいと思います。私の場合、家事を効率よくおこなうことをやめて、無駄に動くようにしています。
――もう少し詳しく教えてください。
工藤先生 今までは、家の中で動くルートを考えて、「これとこれを持って行って、あそことあそこで用事を済ませてしまおう」と、効率化を意識していたんです。でも、万歩計で測ってみたら全然、歩けていなかったんですね。今は、家の中の家事や用事に一つひとつ取り組んで消費エネルギーや歩数を稼ぐようにしています。