
人間ドックなどの健診結果にある「脂質代謝」。特に注意喚起がないとスルーしてしまうかもしれませんが、3年前、5年前と比べて増えている方もいるのではないでしょうか。基準値内であっても、年齢とともに増えていると心配になるもの。そこで、40代以降の更年期世代のコレステロール値はなぜ上がりやすいのか、産婦人科医の駒形依子先生に聞きました。
教えてくれたのは…
監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。
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脂質代謝とは?

駒形先生によれば、健診結果にある「脂質代謝」には以下のような項目があると言います。
総コレステロール(基準値140~199mg/dl)
HDLコレステロールとLDLコレステロール、中性脂肪の値から算出される数値。基準値から外れている場合は、何が原因になっているかに着目する。
中性脂肪(30~149 mg/dl)
中性脂肪は、食物摂取後に小腸で吸収され血液の中に入ってエネルギー源として使われます。皮下脂肪や肝臓の脂肪として蓄積されますが、増え過ぎると肥満、脂肪肝、糖尿病などの原因となり、悪玉のLDLコレステロールの増加につながります。
HDLコレステロール(40 mg/dl以上)
善玉コレステロール。余分なコレステロールを末梢細胞から回収し、肝臓に戻すのが役割です。
LDLコレステロール(60~119 mg/dl)
悪玉コレステロール。肝臓内のコレステロールを体中の末梢細胞に運ぶ役割があります。数値が高いということは、細胞に運ばれず血液中に残ってしまったコレステロールが多いということになります。取り残されたコレステロールが血管の壁にくっついて血流が悪くなり、動脈硬化を引き起こす原因となります。
nonHDLコレステロール(90~149 mg/dl )
総コレステロールから善玉のHDLコレステロールを引いたもの。 血液中にはLDLコレステロールとは別の、さまざまな悪玉コレステロールがひそんでおり、それらを含めたすべての悪玉の量を表すのが、non-HDLコレステロールの値です。
「脂質代謝とは、脂肪を分解する能力、機能を指します。更年期のころはこの脂質代謝が落ちる傾向にあります」(駒形先生)
更年期世代はなぜLDLコレステロール値が上昇する?

40代以降になると、コレステロールの中でも悪玉のLDLコレステロールが上昇しやすいと言います。それはなぜなのでしょうか。
「その理由を話す前に、知っておいてほしいのは、LDLコレステロールは少な過ぎても良くないということです。ある程度の悪玉がなければ、善玉のHDLコレステロールが機能しないからです。健診結果にある基準値内であれば、善玉と悪玉のバランスが取れているということになります。
さて、女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールを材料に産生されますが、更年期になるとその量は減っていきます。
作られる女性ホルモンは減るのに、それまでと同じように脂肪の多い食事をとっていると、コレステロールが余ってしまいます。
脂肪の分解は主に肝臓でおこなっているのですが、
コレステロールが余ってしまうと肝臓にも脂肪がたまって、脂肪を分解する機能が低下してしまいます。その結果、善玉のHDLコレステロールが減って、悪玉のLDLコレステロールが増えてしまうのです」(駒形先生)。