
閉経を挟んだ前後5年間を「更年期」といいます。更年期には女性ホルモンの分泌が減り、心身ともにいろいろなゆらぎがあると知られています。豆腐などに含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモン様作用があるとされ、長らく注目されてきましたが、女性ホルモンが減る更年期には、健康と美容のためには大豆イソフラボンを積極的に補う必要があるのでしょうか。アンチエイジングに詳しい、美容専門医の黒田愛美先生に聞きました。
教えてくれたのは…
監修/黒田愛美先生(Zetith Beauty Clinic 医師)
美容外科、美容皮膚科、予防医学(栄養療法)、アンチエイジング専門医。Zetith Beauty Clinic 、東京美容外科沖縄院にて勤務。トライアスロン日本代表の経歴を持ち、⾃分がアスリートであることも⽣かしつつ、美と健康のスペシャリストとして「中からと外からの美と健康」を信念に、外から(美容医療)だけでなく、中から(分子栄養学、予防医学)の美と健康の権威として多くの文化人、芸能人、アスリートからの信頼も厚い。著書に、「中田敦彦のYouTube大学」でも紹介された「アスリート医師が教える最強のアンチエイジング」(文藝春秋社)がある。
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大豆イソフラボンはたくさんとったほうが良い?

大量かつ継続的に摂取すると健康面に影響が
一般的に更年期というといつごろで、どのような変化があるのでしょうか。
「日本人の平均閉経年齢はおよそ50歳です。その前後5年間、10年間を更年期と呼ぶので、平均的には45歳から55歳くらいです。この時期は女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減り、健康面でも美容面でもさまざまな不調が出やすくなります。
美容面だけで言えば、女性ホルモンの減少は、肌の弾力を保つコラーゲン繊維やエラスチン線維の変性による機能低下、皮脂分泌減少による肌の乾燥などを招き、シワやたるみを進行させるなどの肌トラブルの原因になります」(黒田先生)。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た作用をすると聞いたことがあります。更年期に女性ホルモンが減るなら、大豆ホルモンで補ったらよいのかな?と思うのですが……。
「大豆イソフラボンは化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)と似ていて、エストロゲン受容体(エストロゲンレセプター)に結合することから、女性ホルモンに似た働きをヒトに及ぼすかどうか研究が進められています。女性ホルモンは、肌の組織に潤いを与えるなど美容効果が認められています。
しかしここで注意したいのは、大豆は健康面でいくつか指摘されている点があるということです。
大豆にはさまざまな栄養が含まれていますが、ゴイトロゲン、フィチン酸、トリプシン阻害物質といった物質も含まれています。
ゴイトロゲンは甲状腺機能異常のリスクが高まることがわかっており、フィチン酸はミネラルの吸収を阻害する物質。トリプシン阻害物質とは消化を抑制する物質です。もともと大豆は消化しにくい食品として知られています」(黒田先生)。
それでは、大豆はとらないほうが良いのでしょうか。
「いえ、今紹介した物質はごく微量で、通常量の大豆摂取ではまったく問題ありません。
大豆を大量に、かつ継続的に摂取することが問題となります」(黒田先生)。
大豆はどのようにとるのが良い?

発酵食品をとりましょう
なんとなく大豆のイメージが悪くなってしまいましたが、日本人は毎日、大豆を何かしらとっていると思います。いかがでしょうか。
「どんな食品もメリットとデメリットがあります。大豆も同じです。
そして、先ほど紹介した健康面に影響を及ぼす可能性がある物質の一部は発酵
大豆食品は、発酵させたものを積極的にとるといいでしょう。
日本人がよく食べる、大豆の発酵食品は味噌と納豆ですね。
特に意識しなくても日本人は大豆を十分にとっています。頑張ってたくさんとる必要はないのです」(黒田先生)。
味噌と納豆を選ぶときに注意点はありますか。
「味噌は、だし入り味噌でなく、大豆とこうじ、塩だけが原材料のものを選ぶようにしましょう。添加物は腸内環境を乱す原因となるからです。
納豆は、ひきわり納豆のほうがビタミンKが豊富なのでおすすめです。遺伝子組み換えの食品は、まだ人体への影響が明らかになっていないため、避けたほうが無難です」(黒田先生)。