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私の実家は三世代同居が当たり前の田舎で、介護の必要な家族がいたら家族(特に嫁や娘)が担当するのが当たり前で、「福祉サービスなどを使うのはもってのほか」という考え方が当たり前とされていました。それは想像以上の大変さでした。
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私の実家の祖父母は仲が良く、祖父が病死した後、祖母は家の中に引きこもるようになりました。歩かずに寝てばかりいるようになったある日、亡くなった祖父を探したり、子どものころに仲良しだった人の名前を大声で呼んだりするようになりました。
病院に連れて行った結果、アルツハイマー型認知症(認知症の一種で、脳の一部が縮んでいくことにより物忘れなどが生じる病気)と診断されました。私は仕事があったため、母が中心になって介護を引き受けていましたが、昼間寝てしまうと夜ウロウロ歩き回ったり、食事をさせてもそれ以上に食べたがり、部屋中に失禁したりと、そのたびに祖母を探したりなだめたり掃除をしたりと、母も私も疲れ果てていきました。
そのころは、「介護は嫁か娘の仕事」という考え方が根付いていた地域に住んでいたため、限界まで我慢してしまったのだと今では思います。
ある日、祖母が高熱を出したため病院に行くと、肺炎と診断され、そのまま入院となりました。祖母がいるときとはまったく別の家のように静かになったわが家で、母も私も久しぶりにぐっすりと眠りました。
母は親戚に何を言われてもいいという覚悟で、退院後の祖母を施設に入所させました。そして毎日、祖母のところへ通っていました。その数年後、祖母は施設で亡くなりました。
認知症になった祖母の介護は、いつ終わるのか出口が見えないこともあって、家族だけが担うには肉体的にも精神的にも負担の大きなものでした。症状にもよりますが、家族に介護の必要な人が1人いたら、世話をするのはひとりというわけにはいきません。
介護施設に入所させてからは、私の母は毎日祖母のもとへ通っていました。少なくとも夜は何の心配もなく眠れるようになったことで、介護施設で働く方々のおかげで私たち家族は救われたのだと今でも思っています。
福祉サービスを使うのは恥ずかしいという考えがあった土地柄、施設に家族を預けるという母の決意は思い切ったものだったと思います。でも、もし祖母が認知症でなかったら、家族に迷惑をかけるのは嫌だと考えたに違いないと私は思っています。家族全員が自分の心身の健康を守るためにも、自分たちだけで何とかしようと思わず、「施設や福祉サービスを使うのは恥ずかしいことではない」ということを、身をもって学びました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。
文/吉田三子
ウーマンカレンダー/シニアカレンダー編集室
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