
年に一度の健康診断で必ずおこなう、身長測定。あるときから「去年より減っている?」と感じることはありませんか? 伸びることはもうないにしても、40代、50代になってから身長が縮むことがあるとはどういうことなのでしょうか。産婦人科医の駒形依子先生によれば、加齢で身長が低くなるのはよく見られることではあるものの、加齢によりすべての人が低くなるわけではないということ。それでは、身長が縮む人と縮まない人との差はどこにあるのでしょうか。駒形先生に聞きました。
教えてくれたのは…
監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。
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加齢で身長が縮むって本当?

体内の水分量の低下が原因になることも
一般的に聞かれるのが「40歳以降は10年ごとに1cm背が縮む」という話。これは本当なのでしょうか。
「加齢によって身長が縮むことはあります。ただ、年を重ねればすべての人の身長が縮むというわけではありません。
まず、加齢でなぜ身長が縮むかというと、
- 加齢により体内の水分が減少
- 背骨にある椎間板の水分量も減り、厚みが薄くなる
- 筋力が低下して骨を支えきれなくなる
などが挙げられます。体内の水分は子どもで70%、成人で60%、老人で50%と減少していくといわれており、40代、50代のころは体内の水分が少しずつ減っていく時期と言えます。
特に女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンが減ると体に水分を引き込む力が低下するため、筋肉が硬く乾燥しがちです。筋肉が硬くなると代謝が低下して新しい骨が作られにくくなってもろくなり、骨密度が低下していきます。それに加えて、筋肉が変形すると転倒もしやすくなります。
身長が縮むと見た目が変わるだけでなく、健康面でもさまざまな弊害が現れてきます」(駒形先生)。
体内の水分量が減ること以外にも身長が縮む原因はあるのでしょうか。
「ほかにも、
- 長年の姿勢の悪さ
- 肥満
といったことも身長が縮むことと関係があります。姿勢が悪いと筋肉が変形して背骨を十分に支えられません。肥満についても、筋力が低く脂肪が多ければ多いほど背骨に負担がかかるため、身長が縮む原因になります」(駒形先生)。
年を重ねれば皆、身長が縮む?

筋力向上&適性体重を維持して
年を重ねることで身長が縮むのは、仕方がないことなのでしょうか。
「そんなことはありません。筋力を向上し、適性体重を維持する努力をしている方なら、身長も維持しやすくなります。
先ほど、加齢で体内の水分量が減るという話をしましたが、筋肉を鍛えている方は筋組織(筋肉を作る組織)がしなやかなので、鍛えていない人と比べて水分が取り込みやすいのです。
筋力があれば骨を支えることもできるので、身長を維持できます。
体重についても、適性であれば骨への負担は少ないですよね。お肉がいっぱい体にあればそれだけ骨に負担がかかって背骨の椎間板(ついかんばん:背骨にあり、骨と骨の間でクッションの役割を担う)への圧力が増え、それが身長にも影響していきます」(駒形先生)。
閉経後の女性は女性ホルモンの分泌が減ることで、骨密度が低下することが知られています。骨密度の低下と身長が縮むことと関係はないのでしょうか。
「骨密度が低下すると、ちょっとした動作で腰椎の骨がつぶれる圧迫骨折が起こりやすくなりますが、この圧迫骨折が起きると身長が縮むのです。
重いものを持ち上げたとき、大きなくしゃみをしたとき、負荷をかけて腰を下ろしてしまったときなどに起こりやすくなりますが、「ただの腰痛」と見過ごしている人も多いです。
腰痛がいつまでも治らないという方は、一度整形外科で骨密度を測ってみてもらうといいでしょう」(駒形先生)。